前回、「ユーザーにとってなくてはならない価値を実現するために、ビルメンテナンスの業務を再編成すること」を提案させていただきました。それはいったいどういうことなのか、お話しさせていただきたいと思います。
ビルメンテナンスの仕事は、例えば清掃、設備管理、警備をはじめ、実に多種多様なサービスを組み合わせることで、ユーザーにとっての「価値」を提供しています。当然、ユーザーが求める価値、つまりベネフィットはそれぞれ違いますから、ビルメンテナンスは各々のユーザーベネフィットを満たすために、あらゆるサービスを最適に組み合わせて提供していると思います。
身近な例で置き換えると、パソコンがこれに近いのではないでしょうか。一言でパソコンといっても、構成するパーツはCPU、メモリ、記憶媒体、グラフィックボード、電源ユニット(バッテリー)など多種多様で、それぞれに星の数ほどの製品があります。パソコンメーカーは、お客様のベネフィットを満たすために、パーツを最適に組み合わせて製品を作り、提供しています。
例えば、「いつでも持ち歩いて使いたい」というベネフィットを満たすために、とにかく軽量でバッテリーが長持ちするモバイルパソコン。「3Dのゲームを快適に楽しみたい」というベネフィットを満たすために、グラフィック性能とメモリを最大まで強化したゲーミングパソコン。「性能より低価格重視」というベネフィットを満たすために、余計な機能をそぎ落として低コスト化したビジネスパソコンなど、実にさまざまです。
では、ビルメンテナンスはどうでしょうか。例えば「徹底的に衛生的な環境が欲しい」というベネフィットを満たすために、殺菌・消毒を強化した清掃や、空気質のコントロールを強化した設備管理・衛生管理、外からの菌の持ち込みを徹底的に排除する警備などを組み合わせたサービス。また「毎日快適に働きたい」というテナントのベネフィットを満たすため、家庭と同じレベルの清潔感がある洗面所の演出(清掃)、くつろげるリフレッシュコーナーを演出する設備や照明(設備管理)などを組み合わせたサービス。組み合わせや見せ方を変えることで、ユーザーの経営向上、利益向上という「積極的価値」を明確に表現できそうです。
昨年11月、ビルメンヒューマンフェアの基調講演「これからの不動産経営について」のなかで、講師の牧野知弘氏(オラガ総研)は、ビルメンテナンスに求められているのは「何がオーナーのためになるのか、何がテナントのためになるのかを考え、オーナーに寄り添い、問題を解決してくれる頼れる存在になること」だと提言されています。このような考え方を持つユーザーが増えていることは間違いないと思われます。
(月刊ビルメン「ビルメン虎の穴」3月号より)
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