2017年業界ニュース

2017/08
警備員が勝訴:千葉地方裁判所
夜間の仮眠時間を労働時間と判断

商業施設イオンなどで警備にあたる同社グループ会社のイオンディライトセキュリティの社員が、夜間の仮眠時間も実際には業務が続いているのに残業代が支払われていないと訴え、残業代およそ100万円に慰謝料を合わせた総額600万円余りの賠償を求めていた裁判で、千葉地方裁判所は5月17日、「仮眠時間も労働からの解放が保障されているとは言えず労働時間にあたる」と指摘し、残業代のほぼ全額と慰謝料の一部、合わせておよそ180万円の賠償を命じた。

判決によると、原告は2011年9月に入社し、2015年5月まで東京や千葉のイオン系列の商業施設などで警備業務を担当してきた。勤務は24時間連続の場合もあり、その際は30分の休憩時間と未明に4~5時間の仮眠時間が定められていたが、「仮眠時間内でも制服を脱いでおらず、外出も認められていない。異常があればすぐに応対しなければならず、会社は従業員に警備態勢の継続を求めていた」と主張していた。

判決のあと原告は、「警備業界では同様の境遇で働く仲間が大勢いる。会社は判決に真摯に向き合ってほしい」と語った。一方、会社側は「判決内容を確認し適切な対応を取っていきたい」とコメントしている。

警備業界では2002年、「大星ビル管理事件」という同様の裁判があり、最高裁第一小法廷で、仮眠時間を労働時間と認める差し戻し判決があった。今回の判例と酷似しており、24時間勤務のビル管理会社社員の仮眠時間が問われたケースで、外出は原則禁止され、仮眠室で待機するほか、電話応対や警報が鳴った際の対応が義務付けられていた。労働からの解放が保障されておらず、休憩時間ではなく労働時間に当たるとの判断が示された。

その一方で、東京高裁が2005年に判決した「ビル代行事件」は、ビル管理会社の警備員の仮眠時間について、実作業に従事する必要性が生じることが皆無に等しく、実質的に警備員として対応する義務がなかったとして、仮眠時間は休憩時間に当たると判断されたケースもある。「呼び出しがあれば応対しなければならない」のであれば、それは労働時間にあたるというのが一般的な考えだが、それは待機時間の内容や状況によって判断が異なるという難しさがある。

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