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企業評価と実際の売買価額はどう違う?

「あなたの会社の価値はいくらか?」と質問されても即答できる経営者は少ないでしょう。しかし、「あなたの会社をいくらで売りたいか?」と聞かれれば答えやすいのではないでしょうか。

これが企業評価と実際の売買の違いを端的に表す質問です。

売り手の経営者は理論的な評価方法がどのようなものであれ、自分の会社を「もっと高く評価してほしい」と考えているものです。

特にオーナー企業の場合、創業から20年、30年と長い間経営を続けてきているケースが多いでしょう。会社を長年経営していると、時に予想もしない大事件が起こります。信頼していた幹部に裏切られる、今月の給与が払えないくらい資金に窮する、大口得意先から取引が打ち切られる、会社が倒産の危機に陥る、など。オーナー経営者は程度の差はあるかもしれませんが、多かれ少なかれそういった苦労をご経験されていることでしょう。

このような苦労を含めて、会社を高く評価してほしいと願うわけです。これを当社では「心理的企業価値」と呼んでいます。

譲渡希望の経営者は、経済的価値よりもやや高めの譲渡希望価額を想定されているケースが多いように感じられます。しかし、買い手はビジネスとしてM&Aを行いますから、あくまで経済的価値で考えています。

しかし、実際の取引はそれでは成立しません。売り手は理論がどうであれ、一定の水準を越えなければ売却に応じてくれません。買い手にとっては何らかの必要性があって買収するわけで、買収が不成立であれば自社の思い描く経営戦略が遅れることになります。したがって、必要な買収であればある程度は売り手企業の経営者に歩み寄ります。

では、買い手は経済合理性を無視して買収することになるのでしょうか? 決してそうではありません。実は「経済的価値」は相対的なものなのです。つまり、売り手にとっての経済的価値と買い手にとっての経済的価値は異なるのです。

図: 経済的価値

売り手が希望する提示額に対し、買い手はその価額で買収して自分のソロバンに合うかどうか検討します。ソロバンに合わなければ、自社のソロバンに応じた買収価額を提示し、売り手がそれに応じられるかまた検討する…。オーナー企業のM&Aはこんなプロセスを経て売買価額が決まっていきます。

売買価額と理論的企業価値は、相互に依存しています。分かりやすく言えば、M&Aでは理論的価値だけで売買価額が決まるわけではないし、双方の希望だけで売買価額が決まるわけでもないのです。

M&Aをスムーズに成立させたいのであれば、売り手は極力心理的価値を排除し、自社を第三者的に客観的に見直さなければなりませんし、買い手はそういった売り手の気持ちを理解して取引に臨む姿勢が大切です。