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DCF法

会社の収益またはキャッシュフローに着目する企業評価方法 ~DCF法~

純資産価額法では、企業の持つ「のれん」や将来に対する「期待や希望」が反映されませんでしたが、それでは企業のオーナーとしては売却に応じにくいかもしれません。そのため、純資産価額法がM&Aにおける評価方法として利用されることはあまりありません。

企業を売却するオーナーは、「将来の利益を得る権利」を放棄するわけですから、株式売却額に反映させてもらわないと経済的にはメリットを感じないでしょうし、オーナー企業であれば、心情的には長年培ってきた「のれん」を正当に評価して欲しいという思いがあるはずです。また、買い手も「将来の利益を得る権利」を買う対価として買収代金を支払います。このように企業が生み出す将来の予想利益を見積もり、その総和を企業価値とする企業評価方法は将来の収益を企業価値に織り込む評価方法は極めて合理的なため、M&Aでは最もよく活用されています。

会社の収益またはキャッシュフローに着目する企業評価の手法として非常にポピュラーなのは、DCF (ディスカウンテッド・キャッシュフロー; Discounted Cash Flow) 法と呼ばれる企業価値評価法です。

DCF法による評価は、以下のような手順を踏んで行われます。

  1. 事業計画を作成
  2. 割引率を決定
  3. 余剰資産を「+」し、有利子負債を「-」して株式価値を算定

事業計画を作成する

DCF法では、将来の予想収益を基に評価を行うため、評価対象会社の将来の事業計画が必要となります。企業評価にあたっては、概ね5年分程度の事業計画を利用することが一般的です。DCF法の適用に際しては、この事業計画の精度・信頼性が株式価値に大きな影響を与えるため、評価対象企業が営む事業の市場動向・同業他社との競争といった経営環境に即して実現可能なものか、必要な設備投資が盛り込まれているか、といった観点から事業計画の信頼性を検討する必要があります。

この事業計画から以下の式により、各年度の予想フリー・キャッシュフロー (純現金収益) を計算します。

フリー・キャッシュフロー = 税引後営業利益 + 非資金費用 - 設備投資 - 運転資本増加額

難しいと感じる方は、「なにしろ利益ではなく、キャッシュフローがベースになるのだ」ということと、税引き後利益に支払利息と減価償却費を足して将来必要になる設備投資を引いたものが大体のキャッシュフローとお考えください。

割引率を決定する

銀行預金の利率が年5%だったと仮定した場合、銀行に預けた100万円は1年後には105万円 (= 100万円×1.05) に、2年後には110万円 (= 100万円×1.05×1.05) になっています。これを未来からさかのぼって考えると、「2年後の110万円は、今の100万円と同価値 (110万円÷1.05÷1.05≒100万円)」ということができます。

DCF法で事業価値を算定する場合にはこれと同じように考え、各年度のキャッシュフローを複利で割引計算します。なお、事業計画は5年分程度作成しますが、DCF法では評価対象会社はそれ以降も事業活動を継続するとの前提に基づいて評価を行うのが一般的です。会社は事業計画期間以降も永続するものとの考え (これをゴーングコンサーンの前提と呼んでいます) が根底にあり、この価値を永続価値、または「ターミナル・バリュー」と呼んでいます。

ターミナル・バリューは事業計画最終年度の予測キャッシュフローを割引率で割って算出します (他にもいろいろな算出法がありますが、ここでは最もポピュラーな方法のみを説明しておきます)。

いずれにしても、将来のフリー・キャッシュフローの現在における価値 (これを専門用語で現在価値と呼んでいます) とターミナル・バリューの現在における価値を合計します。また、「割引率」をいくらにするかもDCF法適用に際してのポイントとなります。たとえば、毎年1億円ずつのキャッシュフローを生む会社の割引率が10%の場合は企業価値が10億円となりますが、割引率が20%だと5億円となり、倍ほどの開きが出ます。

割引率は評価対象企業の自己資本コストと負債コストの加重平均により計算した「加重平均資本コスト (WACC: Weighted Average Cost of Capital)」と呼ばれる割引率を使う方法が一般的ですが、この割引率の決定だけで専門書が1冊書けるぐらいのテーマですので、ここでは説明を省略します。

ただし、難しい理論を勉強するのはご免だが、割引率をどう設定するのかどうしても知りたいという方は、「自分が1億円投資するとして何%のリターンを得たいか」を基準に考えてみてください。

図: DCF法のイメージ図

余剰資産を加算し、有利子負債を控除して株式価値を算定する

実はDCF法は株式の価値を直接算定する方法ではありません。本業のみの事業価値を算定する方法なのです。混乱を避けるために、事業価値と企業価値の考え方を整理しておきましょう。

事業価値とは、事業そのものの価値で、企業が持つ余剰資産の価値は含みません。同じように有利子負債の価値を控除していません。したがって、企業全体の価値は、事業価値 (a) に余剰資産を加算し、さらに有利子負債を控除して企業価値を算出します。分かりやすくいえば、DCF法で算出された事業価値から正味の負債を引いたもの (これをネットデットと呼んでいます) が企業価値になります。

図: DCF法によって算定された企業価値 ※ (a) から (b) を引いたものが企業価値になります。DCF法で算定された事業価値に余剰資産を加算し、有利子負債を控除します。これがDCF法によって算定された企業価値です。