M&Aによる課題解決

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M&Aとは

M&A(エムアンドエー)は英語のMergers(合併)and Acquisitions(買収)の略です。つまり、M&Aとは、複数の企業を一つの企業に統合したり(合併)、ある企業が他の企業の株式や事業を買い取ったりする事(買収)をいいます。

M&Aとは

M&Aの基礎知識

M&Aの手法

一般的に、狭義のM&Aは、「企業や事業の経営権を移転させる事」をいい、合併や株式譲渡(譲受)、事業譲渡(譲受)等の手法があります。一方で、広義のM&Aには、経営権を移転しないまでも、何らかの協力関係を構築する資本提携や業務提携が含まれます。

図: M&Aの手法

株式譲渡 第三者割当増資 株式交換 事業譲渡 合併 会社分割 資本・業務提携

M&Aの成立

何をすればM&Aが成立するのでしょうか。これは、M&Aの手法によって違います。例えば、株式譲渡(譲受)の場合は、譲渡側と譲受側で合意した条件に基づき契約を締結します。その契約に基づき譲渡側から株式を譲受側に譲渡して、譲渡対価を支払うと成立します。また、合併の場合、日本では会社法上の組織再編として規定されており、契約を締結後、会社法で求められる手続きを履行すれば成立します。

M&Aの目的

譲渡側

譲渡側のM&Aの目的は、事業承継対策や創業者利潤の獲得、エグジット、事業の選択と集中、企業再生等があります。

譲受側

譲受側のM&Aの目的は、既存事業の規模の拡大、新規事業の獲得、人材や技術の確保等があります。

M&A市場の動向

ソニーのコロンビアピクチャーの買収や、三菱地所のロックフェラーセンターの買収に象徴されるように、日本のM&Aが脚光を浴びたのが1989年になります。これ以降、1997年の独占禁止法の改正、1999年の株式交換・株式移転制度の導入をはじめとしたM&Aに関連する法改正の影響もあり、年々M&Aは増加していきました。2006年には会社法の施工や2007年の三角合併の解禁の動きもあり、日本のM&A件数はこの頃ピークを迎えます。

M&A市場の動向

しかし、リーマンショックの影響以降、日本のM&A市場が落ち込みます。東日本大震災のあった2011年には会社法の施工前の水準までM&Aが減少しました。最近では、2011年を底に再度増加基調が続いています。最近の傾向としては、譲受企業側、譲渡企業側双方にM&Aを増加させる要因があります。譲受企業側の要因として、日本の景気が堅調に推移しているとともに、堅実経営を続けてきた企業の財務状態が安定している事が挙げられます。

一方で、日本の構造的な課題である少子高齢化問題は、すべての産業において将来不安を生み出しています。自前での営業努力だけでは業績の拡大が出来ないのではという危機感を覚えている企業も少なくありません。このような状況の中で、業績の拡大を志向する譲受企業がM&Aに傾注しています。また、足元では景気が堅調であるため、人手不足が深刻化しており、その解決策としてM&Aが注目されています。

譲渡企業側には、経営者の高齢化と事業承継問題が社会問題となっており、M&Aの増加要因になっています。中堅中小企業の経営者の平均年齢は年々増えているにも関わらず、後継者が決まっていない企業の割合が高い状態が続いています。この事業承継問題の解決手段としてM&Aが浸透しつつあります。また、以前はM&Aといえば、乗っ取りやマネーゲームといった悪い印象を持った経営者が多かったのではないかと思いますが、近年では課題解決の手段としてM&Aを捉えている経営者も増えている印象です。

M&Aの歴史

財閥の興隆と業界再編(明治時代~昭和初期)

戦前、M&Aは、日本で積極的に行われており、財閥の拡大や業界再編に寄与していました。1800年代後半から1900年代に旧財閥系がいわゆるM&Aも活用して事業拡大したことが知られます。1880年頃から政府は官業を三井や三菱等の財閥に安く払下げ、これら事業を譲り受ける事で財閥が事業を拡大します。この手厚い保護体制のもとで、事業買収を進め様々な産業を傘下に収めていきます。

M&Aの歴史

明治時代から昭和初期において、日本の産業や国際貿易の発展、戦争による需要などにより、財閥が巨大な富と権力を手中に収めていきました。財閥は、純粋持株会社に様々な企業を傘下に収めて運営しましたが、敵対的買収も含め、数多くのM&Aが行われたとされます。日本のM&Aブームのひとつに、明治時代後期からの紡績業の再編が挙げられます。当時の業界では紡績業界の合従連衡が唱えられていました。当時の日本の基幹産業であった紡績業が、中国等の新興国台頭により競争環境が厳しく、燃料費や人件費のコスト増により業績が悪くなっていたとされます。いわゆる再生M&Aも数多く行われました。結果として、地方色が強く小規模であった数百社存在した紡績企業は概ね6つの企業に収斂されました。

この頃、製糖業のM&Aも盛んに行われていました。27の製糖会社が合従連衡を繰り返していった結果、1920年代前半には11の製糖会社にまで絞り込まれます。そして、1927年の金融恐慌期の業界再編によって、9つの製糖会社が生き残ることになりますが、戦時体制の深化にともなう業界再編によって、近代製糖業界は四大製糖と呼ばれる台湾、明治、大日本、塩水港のメインプレイヤー4社へと収斂されました。

また、1920年代には競争が激化した電力業界の合従連衡が盛んに行われました。発電所や大容量送電線の獲得という意味で垂直的、供給区域の拡大という意味で水平的なM&Aを実施していきました。数々のM&Aを通じて5社の大手に集約したとされます。双日のルーツであり、戦前に存在した鈴木商店のM&Aの歴史も興味深いです。第一次世界大戦中に台頭し、一時は三井、三菱も圧倒すると言われました。鈴木商店もM&Aを積極的に活用して事業を拡大させた企業といえます。

しかし、金融恐慌により破綻してしまいます。そして、いわゆる再生M&Aにより破綻した鈴木商店傘下の企業が復活する事になります。双日は勿論、神戸製鉄所や帝人、サッポロビール、J-オイルミルズ等様々な企業が鈴木商店の流れをくんでいます。鮎川財閥、いわゆる日産コンツェルンはM&Aを積極的に展開した財閥のひとつです。日産自動車を中心に、現在の日立製作所、JXTGホールディングの源流の財閥になります。中核の日本産業は、株式公開により資金を調達し、その資金を活用し、M&Aを進めていきました。その子会社も積極的に株式公開を行っています。新日鐵住金の前身である日本製鐵は、官営八幡製鉄所を中心に、輪西製鉄、釜石鉱山、三菱製鉄、九州製鋼、富士製鋼の1所5社が1934年に合同して設立された鉄鋼メーカーでした。設立は、現物出資方式がとられています。その後、東洋製鉄の資産の現物出資や大阪製鉄より資産を買収し事業を拡大しました。

<出典>
明治後期のM&A戦略『日本産業金融史研究 紡績金融篇』所収の紡績会社を中心に 青地 正史
戦前日本におけるM&A阪南経済Now7月号
急増するM&Aをいかに理解するか:その歴史的展開と経済的役割 宮島 英昭 経済産業研究所
近代製糖業の経営史的研究 久保 文克/中央大学商学部教授

M&Aが急増している背景

売却側

Point1 経営者の高齢化および後継者不在

東京商工リサーチの2017年2月調査によると、経営者の平均年齢は61.19歳と、年々高齢化が進んでおります。以前は、親族内承継が当たり前でしたが、ご子息ご子女がいない、いても継いでくれない・継がせないという経営者が増えており、会社を譲渡せざるを得ないケースが増えています。

社長年齢別 後継者あり 後継者不在
30歳未満 5.5% 94.5%
30歳代 4.9% 95.1%
40歳代 12.0% 88.0%
50歳代 24.3% 75.7%
60歳代 45.7% 54.3%
70歳代 56.7% 43.3%
80歳代 65.3% 34.7%
Point2 M&Aのイメージ向上

「M&A=身売り・乗っ取り」から、「M&A=経営手段」というイメージへ変化してきています。大手資本傘下に入ることで、事業拡大を実現できるとともに、自社株式の現金化・代表連帯保証の解除・従業員の雇用維持が可能であり、会社を売却できることが一つのステータスと考えられるようになってきています。

買収側

Point1 法律改正の後押し

M&Aを行うにあたり、法や税務上の判断が曖昧であった部分の法整備が進み、M&Aを手掛けやすくなりました。

M&Aに関する法整備一覧
M&Aに関する法整備一覧
Point2 環境変化のスピード加速および資金調達

ITの発達により、環境変化のスピードが加速しています。こうした環境下において、自社でゼロから事業を立ち上げるのではなく、M&Aによって時間を買うことを経営戦略として考える経営者が増えております。また、上場企業・未上場企業共に実質無借金企業が増加傾向にあること及びマイナス金利であることにより、金融機関がM&A資金の貸出を積極的に行ってくれる環境下にあります。

実質無借金の上場企業
実質無借金の上場企業

今後も拡大が見込まれるM&A市場

1.生産人口の減少によるM&Aの増加

下記の通り、日本において生産人口(15歳~64歳)は年々減少しています。生産人口の減少に伴いどの業種においても人材不足に陥ることになります。現に運送業や建設業などではすでに人材不足が叫ばれています。中小企業において人材不足は経営難に直結する問題であり、人材不足が原因で第三者へ経営権を譲渡する中小企業が増加すると予想されます。

生産人口の減少によるM&Aの増加

2.業界の寡占化によるM&Aの増加

例えば調剤薬局業界においては、大手企業が市場シェア拡大のためM&Aが活用したことでM&Aの件数が急増しました。調剤薬局業界では、トップ企業でも市場シェアが低く、シェア拡大の余地が存分にあったことが要因です。調剤薬局業界以外においても今後寡占化が進む業界ではM&Aが頻繁に行われることが予想されます。

3.ベンチャー企業のM&Aの増加

リーマンショックの影響で一時期落ち込んでいたIPOの件数が徐々に回復してきています。日本においてベンチャー企業のEXITの手段はIPOがまずイメージされますが、米国においてはEXITの手段としてM&Aが用いられることが圧倒的に多いです。日本のベンチャー企業でもEXITとしてM&Aを用いる企業が増えてきており、一般的な企業価値算定結果を遥かに上回る金額でのM&Aの実例も見受けられます。今後は日本でもEXITの手段としてM&Aが用いられるケースが増加すると予想されます。