M&Aの業界動向 ホテル・旅館業

2011年 業界動向

業界定義
宿泊料を受けて人を宿泊させる施設。
(旅館業法より)
業界シェア
帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニが「御三家」として知られるが、売上高は3つ合わせても、わずか4%程度に過ぎない。旅館、ビジネスホテル、エコノミーホテルなど、規模も業態もさまざまな宿泊施設がしのぎを削る。
市場規模
3.4兆円

(観光庁、1998年度・旅行消費額の宿泊費)

成長率
4.4%増

(観光庁、1998年度・旅行消費額の宿泊費)

関連法規
旅館業法、国際観光ホテル整備法

ラグジュアリーホテルから家族経営の旅館まで1万社以上がせめぎあうホテル・旅館業界。もともと景気や社会情勢の変化による影響を受けやすく、世界同時不況や新型インフルエンザなどで逆風にさらされてきた。2011年の震災直後は予約のキャンセルが相次ぎ、その後も原発事故による風評被害が長引くなど、苦戦を余儀なくされた。しかし、2011年度後半からは中国や香港からの旅行者が増加に転じた。

ホテル市場規模の推移

その背景には、観光庁の主導で進められていた「ビジット・ジャパン事業」の影響があるとされる。中国政府は2009年7月より、一定の条件を満たした中国人に対して個人旅行査証(ビザ)の発給を開始。その後も段階的にビザの発給条件を緩和してきた。日本を訪れた中国人観光客の人数は過去最高を更新するほど。海外からの観光需要の回復・増加はホテル・旅館業界にとどまらず、観光レジャー業界にとっても大きな需要を生み出すことが期待される。

日本の宿泊産業のうち、旅館業は4万6196軒、ホテル業は9863軒(厚生労働省調べ)。施設数を見ると、旅館がホテルを大きく上回っているが、売上げは減少傾向が続いている。主な理由としては、景気の低迷による法人・団体の宿泊需要の大幅減少が挙げられる。個人や少人数グループに特化したプラン立案、料理や露天風呂で特徴を示すなど、サービスの差別化が求められる。

一方、ホテル需要そのものは復調気配にあるものの、設備投資やランニングコスト、固定資産税で経営を圧迫されるケースもある。せっかくの設備投資をムダにしないよう、再生可能な物件については不動産投資会社などが買収し、専門の会社にホテルの運営を委託するといったスタイルが増えている。また、地元の大型レジャー施設も含めて取り組んだり、地元企業が中心となり、再生ファンドを設立する動きもある。

2001年に会社更正法の適用を申請した大型複合リゾート施設「シーガイア」(宮崎県)は同年6月、米国の投資会社が買収。シェラトンやウェスティンなどのホテルチェーンを世界中に展開する米国スターウッド・ホテルズグループが再建を委託された。2010年には開業以来初めてとなる最終黒字を達成するも、2011年3月期には再び赤字に転落。だが、2012年にはパチンコ業界大手のセガサミーホールディングスが買収。同社は本格的な複合リゾート施設に運営に乗り出す意向だ。

さらに、ホテル各社はレストランウェディングや少人数パーティを導入するなど独自のビジネスモデルも模索している。"デパ地下"ならぬ、「ホテイチ」と呼ばれるホテル1Fの総菜やパン、スイーツなどのテイクアウトを充実。また、会議や商談、イベントなど曜日を問わず、コンスタントに需要が見込める法人需要にも力を入れる。業界の収益モデルが変わる中、生き残りをかけた闘いはますます本格化しそうだ。

ホテル・旅館業界はもともと、M&Aが多い業界として知られる。外資系ホテルが既存の日系ホテルを買収し、日本上陸をはかるケースから、経営難に陥った旅館やホテルを譲り受け、再生を目指すケースまで、さまざまな形のM&Aが行われてきた。近年ではM&Aを実施後、ホテルブランドも変更し、名実ともに再生を目指すというケースも見られる。

2009年には、旅館の再生事業で知られる星野リゾートが「猫魔ホテル」(福島県)、「蓬莱旅館」(静岡県)と相次いで業務提携をはかり、再建を手がけた。さらに、同社は三菱地所と組み、2016年をメドに東京・大手町に高級旅館をオープン予定。一方、ホテルオークラは2010年に日本航空のホテル運営子会社、JALホテルズを買収。2011年には「ホテルオークラJRハウステンボス」(旧・ハウステンボスJR全日空ホテル)をグループに加え、業績拡大をはかる。

ホテル・旅館業界を取り巻く環境は依然として厳しいが、旅行者数の回復など明るい兆しも見えつつある。ホテル・旅館業界におけるM&Aは生き残りをかけた策であると同時に、新たなビジネスモデルを探る挑戦でもある。

東日本大震災の影響による落ち込みが回復したことで営業利益は12社中9社が黒字であるが、減価償却費が大きいためEBITDAは12社中11社が黒字となっている。

EBITDA倍率の平均は17倍となっている。これはホテル業が設備投資やランニングコストで多額の資金が必要であること、また、ホテル業の周辺事業も営んでいる会社が殆どであり、その投資のための多額の資金が必要であることが借入金が多い要因と考えられる。現に主要12社のうち10社が現預金よりも借入金が多い。なお、EBITDA倍率の分布としては、10倍未満の会社が2社、10倍以上20倍未満の会社が6社、20倍以上の会社が3社、マイナスの会社が1社となっている。EBITDA倍率が10倍以下の会社は現預金が借入金を上回っている会社である。

営業利益が黒字の会社は概ね投資キャッシュ・フローが数億円以上のマイナスとなっており、利益を計上するためには大規模な設備投資が必要であることが分かる。一方、営業利益が赤字の会社は投資キャッシュ・フローが概ねプラスとなっており、これは固定資産を売却したことによる収入が要因である。買収にあたっては、買収後も設備投資によるキャッシュ・アウトが毎期必要であることを考慮しないと資金がショートする可能性があるので注意が必要である。

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