M&Aの業界動向 ゲーム業界

2019年 業界動向

業界定義
家庭用テレビゲーム機、携帯用電子ゲーム機、パーソナルコンピュータ等で用いるゲームソフトウェア(ゲームソフトウェアの一部を構成するプログラムを含む)の作成及びその作成に関して調査、分析、助言などを行う事業所。
(総務省日本標準産業分類より)
業界シェア
ゲーム業界の売上首位はソニーの14,797億円である。2位は任天堂の5,044億円、3位はバンダイナムコHDの3,179億円。
市場規模
1兆3,800億円

(「ファミ通ゲーム白書2017」より)

成長率
1.0%増

(「ファミ通ゲーム白書2017」より)

関連法規
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
景品表示法

家庭用ゲーム機では、「PlayStation 4(PS4)」が販売台数を伸ばし、「ニンテンドースイッチ」も2017年12月時点で累計販売台数が1,000万台を超えるクリーンヒット。2017年11月に発売されたマイクロソフト「Xbox One X」も滑り出し好調、一時期は低迷していた家庭用ゲーム機市場は、盛り返しの気配を見せている。米国の調査会社EEDARによると、2015年時点で世界のモバイルゲームプレイヤーは約15億人、年間売上げは250億米ドルと推計されており、これはゲーム市場全体の約3割を占めている。しかし、国内市場だけを見るとモバイル(スマホ)ゲームの急成長は、約1兆円規模に達して以降鈍化傾向にある。モバイルゲームは、ユーザーの流動性が激しいため、ソフトメーカーはいかにして自社コンテンツへの導線を維持するかが課題となっている。著名ゲームやアニメのキャラクターなどの版権(IP)を保有する企業は、その知名度を生かしたゲームを開発し、ユーザーを獲得する戦略にシフトしている。

台頭するPC向けゲーム市場

ゲーム業界で、近年注目されているのがPC向けゲーム市場だ。Jon Peddie Research(JPR)の調査によると、近年「ゲーミングPC」が全世界で販売数を伸ばし、2015年に約2兆8,000億円だった市場が、2016年には約3兆5,000億円に急拡大。2018年10月26日に発売した「Red Dead Redemption2」は初週の小売販売で、歌や映画を含む、全エンターテイメント分野において過去最高の7億2,500万ドルを記録した。「Red Dead Redemption2」はオープンワールドと呼ばれる分野に属するゲームで、一般的なストーリーが定められたゲームと異なり、主人公は基本的に何をしてもよい自由度が高いゲームである。この分野のソフトの開発には世界中の人々が関わっていると同時に、立体的な映像など一定の技術を必要とする。自社で版権を持たないゲーム開発会社も、前述の技術を有することで市場価値が保たれ、今後の需要と比例して市場価値が向上していくと考えられる。また、インディーゲームと言われる個人で作成した製作者の色が強いソフトの台頭も目立つ。多様化したニーズに年間4,000本を超えるインディーゲームが合致するのだ。しかし何よりもPC向けゲーム市場の急拡大に最も影響を及ぼしたのは「eスポーツ」の人気であろう。「eスポーツ」とは、コンピュータゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技としてとらえる際の名称で、大別するとFPS(FirstPersonShooting)一人称でシューティングを行うゲームと、RTS(RealTimeStrategy)戦略型ゲームをリアルタイムで行うゲームの2つのカテゴリがある。欧米では、プロ化が進んでおり、優勝賞金数千万円という大会も頻繁に開催されている。また、IOC(国際オリンピック委員会)は、2017年に開催された五輪サミットで「eスポーツ」をオリンピックの正式競技化に向けて前向きに検討すると発表しており、すでにアジアオリンピック評議会では、2022年のアジア競技大会から正式種目に採用することが発表されている。

2018年2月には、日本国内におけるeスポーツ産業の普及と発展を目的とした新団体「一般社団法人日本eスポーツ連合」が設立。主たる活動は「eスポーツ新興に関する調査、研究、啓発」「eスポーツ競技大会の普及」「大会におけるプロライセンスの発行と大会の認定」「選手育成支援と地位向上」「関係各所との連携」を予定し、段階的に取り組みを進めていく。

直近のゲーム業界の動き

1.ソニーとマイクロソフトの提携
2019年5月ソニーとマイクロソフトはクラウドゲームなどで戦略的提携を締結したと発表した。マイクロソフトのクラウドを活用しゲームやコンテンツのオンライン配信と画像センサーの共同開発も検討する。
ソニーは「プレイステーション」、マイクロソフトは「Xbox」で家庭用ゲーム機器として確固たる地位を築いてきたが今後はクラウド型ゲーム分野でタッグを組む形だ。

2.グーグルの「Stadia」の登場
2019年3月グーグルは新しいゲームプラットフォーム「Stadia」を発表した。
特徴はYouTubeやウェブのゲーミングコミュニティと簡単に統合できる点だ。YouTubeのゲーム動画からプレイするボタンを押すことで動画再生のようにゲームを楽しめる。「Stadia」プラットフォームはクラウド上に存在しているため、ハードは必要なくPCのブラウザやスマートフォンで遊ぶことができる。「Stadia」は11月に先行提供が始まり2020年から本格展開される予定。ゲームストリーミングの確立は、ゲーム業界にとって大きな転換期になるだろう。

3.「Apple Arcade」の発表
2019年3月米アップルは定額制のゲーム配信サービス「Apple Arcade」を発表した。
今年の秋に100以上のゲームと同時にローンチされる予定とのことで、1つのプランを契約するのみでApp Storeにある有料ゲームをプレイすることができる。現在のモバイルゲームの収益構造は広告や課金といったものが主流となっており、この定額サービスが成功することはモバイルゲームサービスの流れを変換することになるかもしれない。

■eスポーツの市場規模

eスポーツの市場規模

出典:市場調査会社:Newzoo

ゲーム業界は、スマホゲーム関連の企業に対する資本参加あるいは買収に伴うM&Aの件数が多い。2015年4月には、モバイルゲーム事業を展開するDonuts(東京都)がスマホゲーム「ぼくのモンスター」や無料マンガサービス「MANGA ZERO」などの実績を持つNagisa(東京都)への出資比率を高めた。オンライン無料ゲームを展開するアエリア(東京都)は、スマホ向けの「乖離性ミリオンアーサー」をヒットさせたトライベック・テクノロジー(東京都)を買収。2016年10月には、グリー(東京都)が子会社のGREE International Entertainment, Inc.(アメリカ)を通じてスマホゲーム開発のPerBlue, Inc.(アメリカ)を買収している。

ヒットゲームのタイトルやキャラクターなどの版権(IP)獲得を目的とするM&Aも件数が増えている。2015年12月に「PALADE」レーベルでスマホゲームを展開するマイネット(東京都)が、Nubee Tokyo(東京都)からスマホゲーム「神界のヴァルキリー」に関する著作権等の権利を取得したケースや、2016年9月にグリー(東京都)がカードゲーム大手のブシロード(東京都)と資本業務提携を結んだケースは、IPを活用したゲームや周辺ビジネスを拡大するためのM&Aである。中国系企業のHappy Elements LTD(東京都)が、同業のグリモア(東京都)を2016年10月に買収したのも、「私立グリモワール魔法学園」のIPを活用したゲーム事業を展開することが狙いといえる。

立地に左右されないゲームビジネスの世界では、地方にも優れたコンテンツを開発する会社が多くあり、そういった企業が事業拡大のためにM&Aを行うケースも少なくない。岐阜に本社を構える日本一ソフトウェア(岐阜県)は、2016年4月にPlay StationやWii、モバイルゲームなどを幅広く手掛けるアドベンチャーソフト開発のあるフォグ(東京都)を買収。「妖怪ウォッチ」などのゲーム企画・制作・販売で有名なレベルファイブ(福岡県)は、IPビジネスを拡大するためテレビ制作のBIG FACE(東京都)に資本参加した。スマホ向けアプリ・ゲーム開発のワンダープラネット(愛知県)は、2016年12月にモバイルゲーム開発に特化したバックエンドサーバサービスのGame Server Services(愛知県)と、モバイルゲーム企画・開発・運営のプレイネクストジャパン(東京都)に資本参加し、事業拡大を目指している。

今後拡大が予想されるのは、先進技術を持つ企業と提携するためのM&Aだ。2015年12月に2D原画を立体表現する描画技術「Live2D」を開発したLive2D(東京都)に資本参加したコロプラ(東京都)、2016年6月にCAC Holdings(東京都)と共同で感情認識AI技術を開発したAffectiva(アメリカ)に資本参加したセガサミーホールディングス(東京都)、AI開発の学習データを提供するDataremer(東京都)に資本参加したソーシャルゲーム運営のSHIFT PLUS(高知県)、2017年3月にVRゲームを開発するよむネコ(神奈川県)、同年6月にもベルリンとロサンゼルスに拠点を持つVRゲーム開発のPlaysnak, Inc.(ドイツ)に資本参加したモバイルゲーム開発・運営のgumi(東京都)などが、このケースにあたる。

スマホ向けのソーシャルゲームで好業績を上げている企業は、EV/EBITDA倍率6倍以下の企業が多く、家庭用ゲーム機を主体とする大手企業は10倍を超える企業が多い。大手企業の売上高は依然高いが、時価総額ではソーシャルゲーム系のベンチャー企業が上回るケースが目立ち始めた。ゲーム業界では、1本のヒットで爆発的な収益を記録することがあるため、売上予測が難しいこともあり、資産とは関係なく期待値で時価総額が膨らむこともあるので留意が必要である。

EV/EBITDA(ゲーム業;n=28)

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