M&Aの業界動向 食品業界

2017年 業界動向(食品卸業界)

業界定義
主として農畜産物,水産物,食料品,飲料を仕入・卸売する事業所
(総務省「日本標準産業分類」より)
業界シェア
小売業向けの食品卸の業界トップは三菱食品で売上高は2兆4,114億円、第2位は日本アクセスで売上高は2兆154億円、第3位は国分グループで売上高は1兆8,178億円。一方、外食向けの業務用食品卸では、業界トップは神戸物産で売上高は2,392億円、第2位はトーホーで2,098億円、第3位は東亜商事で1,513億円となっている。
(いずれも2016年度)
市場規模
46.4兆円

(経済産業省「商業動態統計調査」年報2016年)

成長率
2.1%増

(経済産業省「商業動態統計調査」年報2016年)

食品卸業界は、メーカーから仕入れた商品をGMS、食品スーパー、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、酒類チェーンなどに納品する総合食品卸と、主に外食・中食業や旅館・ホテルなどに納品する業務用食品卸に大別される。

総合食品卸の主要取引先は、イオングループやセブン&アイグループ、ユニー・ファミリーマートグループなど全国展開の大手小売りチェーンである。大手小売りチェーンと取引ができるのは、加工食品、冷凍食品、飲料、酒類、菓子、乾物、日用品、ペットフードなど多様な商品を全国一括納入できる大手食品卸業者に限られる。そのため、地方に拠点を持つ中小規模の食品卸が、大手総合卸に飲み込まれる合従連衡が進んだが、近年は一段落した感がある。

総合食品卸の主要プレイヤーは財閥系の三菱食品(三菱商事系)、日本アクセス(伊藤忠商事子会社)、国分グループ(丸紅と業務提携)、三井食品(三井物産子会社)と、独立系の加藤産業、日本酒類販売、トモシアホールディングス、ヤマエ久野などが占めている。厳しい競争の中で生き残るため、各社は単なる御用聞きやローコストオペレーションから、小売店の売り場づくりなどの販促提案力、メーカーとの共同商品開発、データ分析に基づく需要予測力などサービスを提供する企業へ脱皮を図っている。また、大手食品卸の多くは、人口減少による国内の市場縮小を見据え、海外進出に力を入れている。

中小規模の事業者が群雄割拠する業務用食品卸の世界

約3兆円規模と試算される業務用食品卸の市場は、近年横ばいあるいは微増で推移している。中小規模の外食チェーンとの取引が多いこともあり、全国規模で仕入れられるスケールメリットより、むしろ生鮮品や有機農作品に強いとか、柔軟な配送機能を持っているなどの独自性が評価されることも少なくない。もちろん大規模集約化は今後も進むであろうが、独自性に磨きをかけていけば、小規模な企業でも生き残っていけるのが、業務用食品卸の特徴といえる。

業務用食品卸の主要プレイヤーは、神戸物産、トーホー、尾家産業、久世、大光、サトー商会などが挙げられる。大手プレイヤーに加え、中小零細卸、専門卸などが群雄割拠している。非上場では外食産業向けに全国展開している東亜商事や高瀬物産も、上位に並ぶ規模を有している。

小売業者によるメーカーや産地との直接取引が増大することで、卸業者の中抜きが進むと予想されているが、卸業者が淘汰されることはないだろう。なぜなら、卸業者の価値は、単なる倉庫と物流機能ではなく、その優れた情報力やコンサルティング力にあるからだ。この情報力は、網の目のように地域に根を張る卸業者の最大の強みであり、これを代替しうる業者は、他に考えられないからである。

■食品卸売業の商業販売額の推移(単位10億円)

食品卸売業の商業販売額の推移

出典:資料:経済産業省「商業動態統計調査」 2016年報

食品卸業界では、海外展開を見据えたM&Aが急増している。国分(東京)は、東アジアに日本型卸売事業の展開を目指して、2014年に中国の物流会社である上海恒孚物流(中国)の株式を取得し子会社化、さらにイ坊三慧物流(中国)も買収。2015年1月には上海峰二食品(中国)、2017年4月には中国の輸入食品卸の深セン市一番食品(中国)を買収した。加藤産業(兵庫)も関連会社を通じて2014年5月に中国の食品卸である上海アオジエ(中国)、2015年1月にはナスパック・マーケティング・プレLtd. (シンガポール)、2016年1月にはToen Gla Hiep Trading and Food(ベトナム)を買収、アジア各地で事業展開を強化している。

業務用食品卸大手のトーホー(兵庫)も、2015年11月に食品卸のマルカワトレーディング(シンガポール)を買収して初の海外進出を果たし、2017年1月にも現地の業務用食品卸トモヤ・ジャパニーズ・フード・トレーディング(シンガポール)を買収しシェアを拡大。久世(東京)も、香港の現地子会社を通じて日本企業2社が共同出資する業務用食品卸の上海日生食品物流(中国)に資本参加し、中国沿岸部や主要都市への展開を目指している。

業務用卸業界では、市場縮小による競争激化を背景に、グループ強化や新事業進出を目指したM&Aが相次いでいる。最大手の神戸物産(兵庫)は、2014年3月に酒類製造・販売の菊川(岐阜)を買収、2015年1月には関連会社を通じて鶏肉生産・加工・販売の但馬(大阪)から食肉処理場・養鶏場を譲り受け、同年4月にもプライフーズ(青森)から養鶏場「第一ファーム(群馬)を譲り受けた。これにより神戸物産は、自社施設で養鶏から食肉処理まで手掛ける日本初の食品卸企業となった。

西原商会(鹿児島)は、2015年3月に医療・食品卸のあったか市場(埼玉)を買収し病院・介護施設向けの営業を強化。同年9月には、全額出資で鶏肉輸入販売のサミオ食品(東京)を設立して事業を譲り受け、グループの商品力・調達力を強化。2016年6月には、つくだ煮や醤油などの原材料卸の松山商店(香川)を買収、同年12月には老舗水産加工販売の久保田水産(静岡)を買収、顧客である外食店への提案力向上を狙っている。

近年、積極的なM&Aを仕掛けているのが、コメ卸最大手の神明グループ(兵庫)である。2015年1月には、伊藤忠商事の孫会社で炊飯加工調理食品製造・販売のコメックス(大阪)、2016年1月には居酒屋大手ワタミ(東京)に資本参加、同年4月にはアサヒビールとともに数多くの外食フランチャイズや鶏料理居酒屋「とり鉄」、「どさん子ラーメン」などを展開するアスラポート・ダイニングに資本参加、同年12月には鯖寿司製造販売の鯖や(大阪)に資本参加、コメの販売先である外食店舗を一気に拡大した。さらに、2017年2月には、青果卸大手の東果大阪(大阪)、同年3月には水産食品加工・卸売の神戸まるかん(兵庫)、同年4月には農業生産・食品加工・仕入・販売のナチュラルアート(東京)、「Onigiri stand Gyu!」を展開するトウキョウ・オニギリ・ラボ(東京)、同5月には水産物輸入卸売のコダック(東京)、食材宅配会社のショクブン(愛知)を相次いで買収し、業容を大幅に拡大した。

その他の動きとして、注目したいのはトーホーのM&Aだ。トーホーは2014年7月に、カラオケ店・飲食店などの店舗内設計・施工業の日建(埼玉)を買収している。これは外食ビジネスを営む得意先に対して出店・改装などのニーズを取り込む狙いがあると思われる。さらに2016年8月には、ソフトウェア開発・保守のシステムズコンサルタント(東京)を買収、これは業務改革により企業体質を強化する目的があると考えられる。

トーホーのように、今後の市場縮小に備えて、同業種間だけではなく異業種をも取り込んでビジネスの幅を広げ、収益を確保しようと考える食品卸が増えていくことが予想される。

食品卸業は、取引先の所在地や卸売業者での在庫保有の有無等により複数の取引経路が想定されるため、取引経路ごとに内在するリスクを把握することが重要だ。また、売上債権の口座数が膨大かつ金額が小口、かつ、金融機能を有していることから比較的長期の信用を供与するケース多く、信用リスクが重要なリスクとなりうる。幅広い品揃えを売りにしているため、アイテム数が多く、かつ、仕入コストの削減を目的に一括で購入して小口販売する傾向にあるため、商品の総資産に占める割合がかなり高くなる傾向がある。また、取扱商品の特性にもよるが、商品の得意先とのひも付き度が高いため、得意先の需要予測に基づき商品を仕入れたものの、実際の受注が予測を下回るような場合、滞留在庫となる可能性が高い。物流センター、冷蔵・チルド配送設備網など、一定規模以上の設備が必要な装置産業の一面もあり、膨大な固定費がかかることも事業リスクのひとつといえる。

EV/EBITDA倍率の分布としては6~10倍がもっとも多く約30%を占めている。

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