M&Aの業界動向 飲食業

2017年 業界動向(食品スーパー)

業界定義
主として飲食料品を小売する事業所
(総務省日本標準産業分類)
業界シェア
業界トップは、イオンリテールで売上高は、2兆1,853億円。2位はイトーヨーカ堂で1兆2,550億円、3位はユニーで7,420億円となっている。
(2014年3月期)
市場規模
10.5兆円

(新日本スーパーマーケット協会「2017年版スーパーマーケット白書」)

成長率
3%増

(新日本スーパーマーケット協会「2017年版スーパーマーケット白書」)

「2017年版スーパーマーケット白書」によると、2016年の総売上高はうるう年で営業日が1日多かったことも影響し、前年比103%の微増となった。食品スーパーの店舗数および売場面積を見ると、店舗数は2000年代半ば以降減少傾向にある一方で、売場面積は増加傾向にある。この背景には、大手食品スーパーが郊外型の大型店を出店していることと、中小規模店の淘汰が進んでいることが考えられる。ちなみに、2016年1年間の食品スーパー(各種食品小売業含む)の倒産件数は42件、負債金額は165億円だった。

コンビニエンスストアやドラッグストアなど同一商圏内の異業種が生鮮食品や総菜などを拡大していることも、食品スーパーの競争環境を厳しくする要因となっている。特に、ドラッグストアは過去7年間で販売額が約1.4倍に増えており、販売額に占める食品の割合を14.2%から23.1%まで伸ばしている。ドラッグストアが安価な価格設定で攻勢をかけているため、中小規模の食品スーパーは厳しい競争を強いられている。

都市部と地方で異なるニーズ。人材不足は共通の課題

食品スーパー業界は、都市部と地方でニーズや競争環境が大きく異なる。都市部の課題は、土地がないため大型店を出店できないことだ。特に、近年はタワーマンション建設が盛んなため、住民が一気に増えて食品スーパーのキャパを超えた顧客が押し寄せ、レジ前に大行列ができてしまうことがある。本来ならば、大型店を出店して需要をまるごと取り込みたいところだが、土地がないため「まいばすけっと」や「マルエツプチ」に代表されるような小型店を複数出店して需要に応えている企業が多い。都市部では、この傾向が今後も続き、小型店の集中出店が増えると考えられる。

一方、地方では、過疎化の影響もあり小規模店舗は採算が取れなくなっており、小型店を閉鎖して中大型店に集約する、あるいは複合型ショッピングモールへ出店するという流れが強まっている。

食品スーパーにおける共通の課題は人材不足である。スーパーマーケット年次統計調査によれば、パート・アルバイト人員のおよそ1割が不足しており、特にレジや水産・鮮魚部門、総菜部門、精肉部門の人手不足が顕著だ。地方の店舗では、水産・鮮魚および精肉部門の担当者が自ら市場へ出向いて仕入れる鮮度の良い商品が集客の目玉になっているが、担当者が高齢化し、後継の人材も育っていないため、今後店舗の弱体化が懸念されている。ボランタリーチェーンに加入して、共同仕入れを行えば、効率的な仕入れはできるが、商品が一律化し、差別化ができなくなるリスクをさけられない。また、慢性化する人材不足の影響で、アルバイト・パートの時給も上昇傾向にあり、これが経営を圧迫する要因となっている。対策としては高齢者の再雇用やセルフレジの導入などが考えられるが、問題の抜本的な解決には至っていない。

成長が期待される専門性・独自性を持ったスーパー

一方、業績を伸ばしているのが、他店とは異なる専門性や独自性を持った食品スーパーだ。たとえば、新潟県長岡市寺泊に本社を置き、漁港から仕入れた新鮮な鮮魚を販売する「角上魚類」は、1990年以降出店攻勢を続け、現在では関東甲信越を中心に22店舗を展開、右肩上がりで売上げを伸ばしている。群馬県前橋市に本社を構える「ファームドゥ」は、農家から直接仕入れた作物を販売する「食の駅」や「地産マルシェ」で業績を伸ばしている。ほかにもオーガニック食品を扱う「ナチュラルハウス」や「こだわりや」、高級冷凍食品専門の「Picard(ピカール)」など、独自性を持つ食品スーパーが徐々に増えてきた。

■業態別店舗数の変化(2015年1月との比較/2016年時点)

業態別店舗数の変化

出典:「2017年版スーパーマーケット白書」新日本スーパーマーケット協会

近年の食品スーパー業界におけるM&Aは、イオンに代表される流通大手グループと、ボランタリーチェーン(CGCジャパン、ニチリウグループ、八社会、オール日本スーパーマーケットなど)の動きが目立つ。地方の有力食品スーパーは、ボランタリーチェーンに加入して効率化を図りつつ、同一・周辺商圏内の食品スーパーを買収して規模の拡大を図るケースが多い。

イオングループのM&Aは、全国規模で展開されている。2015年3月には経営統合したマルエツ(東京)、カスミ(茨城)、マックスバリュ関東(東京)を束ねるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京)を設立して一部上場を果たした。2014年9月には、イオン(千葉)が中堅食品スーパーのレッドキャベツ(山口)を買収、グループ会社のマックスバリュ北海道(北海道)も2015年5月に帯広で14店舗を展開するいちまる(北海道)を買収、同年10月にはイオンリテール(千葉)が食品スーパーを展開する清水商事(新潟)を買収、同年11月にもH2Oリテーリング(大阪)傘下のイズミヤ(大阪)から東京板橋店を譲り受け「イオンスタイル板橋前野町」として開業している。

地方では、ボランタリーチェーンに加盟している企業が同一エリアの食品スーパーを買収して規模の拡大を目指すM&Aが多い。積極的にM&Aを行っているのがイズミ(広島)だ。2014年2月に、北九州を地盤とするスーパー大栄(福岡)、同年7月に熊本で4店舗展開する広栄(熊本)、広島・岡山・山口・福岡に64店舗を展開するユアーズ(広島)、同年10月に食品スーパーのデイリーマート(徳島)、2016年9月にも「ショッピングタウングリーンモール」を運営する協同組合グリーンモール(島根)を買収し、中部と九州の地盤を大幅に拡大した。

スーパーマーケットを中核にホームセンター、ドラッグストア、スポーツクラブを展開するバローズ・ホールディングス(岐阜)の動きも注目に値する。2014年3月には、中部電力の子会社でエリンギ生産販売の東邦産業(三重)を買収、2015年5月には兵庫県南部に42店舗を展開する食品スーパーのトーホーストア(兵庫)、山梨県東部で5店舗を展開する公正屋(山梨)を買収している。

2015年1月には、山口を地盤とする中堅食品スーパー丸久(山口)が、大分を地盤とするマルミヤストア(大分)と株式交換で経営統合して新会社リテールパートナーズとなった。これにより中国・九州地区に258店舗を展開する一大勢力が誕生した。

このほかの動きで気になるのは、異業種からの参入組だ。外食大手のゼンショーグループは、2012年に首都圏の中堅スーパーであるマルヤ(埼玉)を買収して食品スーパーに参入、その後も2013年に千葉県市原を地盤とするマルエイ(千葉)、2014年に「VERY FOODS尾張屋」を展開する尾張屋(千葉)、2016年10月に傘下の日本リテールホールディングス(東京)を通じて食品スーパー「フジマート」を展開するフジタコーポレーション(群馬)を買収。バイイングパワーの拡大、セントラルキッチン展開による惣菜の拡充、物流共同化などの相乗効果を狙っていると考えられる。

他にも、阪神ホールディングス傘下のH2Oリテイリング(大阪)が、2016年10月に老舗スーパーの関西スーパーマーケット(兵庫)と資本業務提携を結んだ事例も記憶に新しい。

海外の事例で、国内市場の参考になるのが、米国Amazonによる食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収だ。IT大手による食品スーパー買収は、生鮮ECの「Amazonフレッシュ」との相乗効果を狙ったものだと考えられている。日本でも、高齢化に伴い生鮮品・日配品の宅配需要が拡大しているため、物流システムのノウハウを持つ異業種企業が食品スーパーを買収し、ECや宅配に乗り出すことは十分に考えられる。

スーパーマーケットは、設備投資を抑え、薄利多売で売り上げを確保しているため、投下資本を相対的に短期回収できる業態といえる。ただし、売上高人件費率が高く労働装備率は低い。つまり、店舗などの固定資産投資を抑えつつ、パート・アルバイトを含めた人件費に投資している業態ということができる。基本的に掛け売りはなく、現金回収での取引が多いため、短期の支払い能力を示す数値は他業種より低いが、これはビジネスモデルを考えれば大きな影響を与えるものではない。競争力の源泉となるのは、水産・鮮魚、精肉などを市場で仕入れる目利きや、異なる温度管理隊の食材を適切に管理し、最適な発注・在庫管理ができるノウハウを持っている人材である。M&Aを考える際には、人材という資源にも注目したい。

EV/EBITDA倍率は平均9.7倍、分布としては4~8倍が40%を占めている。

Page Top