M&Aの業界動向 飲食業

2013年 業界動向(食品業界)

業界定義
「食料品製造業」および「飲料・たばこ・飼料製造業」
(総務省日本標準産業分類)
業界シェア
食品業界全体の事業所数は1万8573ヶ所と非常に多く、従業員20人未満の事務所が全体の約8割を占める。一方、生産額は上位200社が全体の半分以上を支える。
(経済産業省「工業統計調査」)
市場規模
33兆円

(経済産業省「工業統計調査」)

成長率
2%減

(経済産業省「工業統計調査」)

関連法規
食品衛生法 食品流通構造改善促進法 食品安全基本法など

食品業界は好況・不況の変動の影響を受けにくい産業として知られ、人口の増加とともに市場規模を拡大してきた。2010年度工業統計表(経済産業省)によれば、従業員10人以上の食料品製造業及び飲料・たばこ・飼料製造業の事業者数は約2万。製造品出荷額は32兆8936億円にも及ぶ。しかし、近年では人口減少や少子高齢化の進行、食習慣の変化などにより、取り巻く環境は厳しさも増している。

農林水産省が発表した「食品企業財務同行調査報告書」によると、食品業界の営業利益率は過去10年間で横ばいとなっている。世界規模の異常気象による農作物の不作、バイオ燃料向けの穀物需要拡大、原油価格の上昇などを背景に、小麦粉や油脂などの原材料が高騰。一方、デフレの環境下では製品価格の引き上げも困難で、利益が出しづらいのが原因だと見られている。

震災後は家庭で料理をする“内食”への関心が高まっている。消費者の節約志向も追い風となり、食品業界の売上は堅調に推移。しかしながら、イオンやセブン&アイ・ホールディングスをはじめとする流通業が手がけるプライベートブランド(PB)の数も増え、競争は激化の一途をたどる。各販路における商品棚の争奪戦に勝ち抜くには、商品開発力に磨きをかけることが求められている。

調味料市場では、ジュレタイプ(ゼリー状)の調味料がブームとなり、需要拡大の動きが見られる。また、冷凍食品や食肉加工、水産加工なども復調気配。内食化を背景に、弁当需要が高まっていることも要因の一つに挙げられている。2011年以降は即席麺の生産額も急増。震災後の非常食需要もあり、レトルト食品やインスタント食品は活気ある市況が続く。

食品業界を考える上で、「食の安心・安全」も必要不可欠な要素である。食の安全性にまつわる不祥事は、大企業であっても一瞬で事業継続が難しくなるほどのインパクトを持つ。消費者の安全志向の高まりもあり、食の安全・安心を確保するためのコスト負担は増えている。ただし、短期間で淘汰される可能性をはらんでいるということは裏を返せば、ビジネスチャンスの宝庫であるという見方もできる。

こうした国内の状況をふまえて、各社は海外展開を加速。そのなかでも、中国や東南アジア、南米など、新興国への進出に力を入れる企業は多い。とりわけアジア諸国の市場開拓は急務とされ、急激な経済成長による市場拡大にも期待が寄せられる。また、先進国・新興国問わず、富裕層にアプローチしようという試みにより、醤油や緑茶といった商品の海外での売上は順調に伸びている。

今後、日本のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加入により、関税が撤廃された場合、食品の輸出には追い風になるが、同時に安価な輸入食材も増える。果たして現状の食品業界にとって、プラスの要因になるのか、マイナスに働くのか不確定要素も多い。引き続き経過を見守る必要があるだろう。

日本の人口の推移

業界再編が加速化する食品業界。市場シェアの上昇や生産合理化を目指したM&Aも増加している。味の素は2012年、カルピスの全株式をアサヒグループホールディングスに譲渡。利益率の低い事業を手放し、調味料など競争力の高い分野に注力することで、食品メジャーとしての地位確立を目指す。同年、マルハニチロホールディングス傘下のマルハニチロ食品は冷凍食品メーカーのヤヨイ食品を子会社化し、業務用冷食事業を強化するなど、新たな動きも見受けられる。

また、市場拡大の可能性を秘めた海外市場に販路を求める企業も続出。製粉業界最大手の日清製粉グループは2020年度までに、海外売上高比率を現在の5%から30%に増やすべく、最大2000億円のM&A投資枠を設定。新興国における市場開発に力を入れる。2011年にはオリエンタル酵母工業と共同でインドに現地法人を設立、翌2012年には米国の製粉会社を買収。原材料の調達に目を向けた海外展開も活発化している。

生産コストの削減や販路の拡大、原材料費の圧縮に至るまで、M&Aの果たす役割と期待は今後ますます高まりそうだ。

食品業界の平均的なEBITDA倍率は約8倍で、EBITDA倍率が10倍以下の会社が約8割を占めている。EBITDA倍率が高い会社の多くは利益がマイナス、または現預金に比べ借入金が格段に大きい会社であることが決算書から読み取れる。

食品業界は上記の通り生産コストの削減や販路の拡大、原材料費の圧縮などを目的としたM&Aが増加することが見込まれている。一般的に利益がマイナスの会社や多額の借入がある会社はM&Aにおいて買収対象となりにくい会社であるが、食品業界ではEBITDA倍率が比較的低い会社が多いことから、財務面から見てもM&Aが増加する余地が十分にあると言える。

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