M&Aの業界動向 EC業界

2019年 業界動向

業界定義
コンピュータを介在したネットワーク上でおこなわれる物・サービスの販売または購買
(OECDによる定義)
業界シェア
業界トップは、Amazonで売上高は1兆3,335億円(日本事業のみ)。第2位は楽天で6,803億円、第3位はアスクルで3,604億円となっている。
市場規模
約16.5兆円

(経済産業省「平成29年電子商取引に関する市場調査」)

成長率
9.1%増

(経済産業省「平成29年電子商取引に関する市場調査」)

関連法規
特定商取引に関する法律

近年、インターネットサービス市場は右肩上がりで成長を続けている。2017年のBtoC-EC市場規模は、16兆5,054億円(前年比9.1%増)に増加した。また、EC化率は、5.79%(対前年比0.36ポイント増)であった。

スマートフォンの普及による影響

スマートフォンの普及により移動中など隙間時間で利用できるようになったことが、EC市場の拡大を牽引している。物販分野では、2017年のスマートフォン経由のBtoC-ECの市場規模は4,531億円増の3兆90億円(前年比17.7%増)と大幅に拡大している。さらに、ネット通販においてもスマートフォン経由は約3割を占めている。こうした背景を受けて、フリマアプリなどスマートフォンに特化した新サービスが次々と登場している。

日本国内のEC化率

EC市場は伸び続けているとはいえ、アメリカや中国のEC化率と比べると日本のEC化率は低いといわざるを得ない。これにはオムニチャネルが深く関わっている。リアル店舗、モバイル、ECサイトなど、あらゆる販売・流通チャネルを統合して顧客接点を多様化するオムニチャネルは、ECビジネスを成功に導くキーファクターといわれている。2019年春のサービス開始を目標に、セブン・フィナンシャルとセブン銀行が共同出資で、決済サービス会社の「セブン・ペイ」を立ち上げた。この決済会社は、グループ内で新たに利用する決済サービスをスタートしようとしている。このサービスと、ポイントサービスである「セブンマイルプログラム」と連携を行うことで、顧客IDの一元化と顧客一人ひとりへのCRMの最大化に繋げ、全チャネルを通じてサービスの質を追求していくことを目指している。またイオンはオムニチャネル施策の受け皿となるECサイト「イオンドットコム」の準備をしている。将来的には「イオンドットコム」内で店舗の商品まで購入できるようにすることを目指している。こうした企業のオムニチャネル化推進により、リアル(対面販売)とECの垣根がなくなってきている。ECでの売り上げがリアルに計上されることが多くなり、販売形態が変化してきている。

市場規模が大きい業種でEC化が進んでいないことも、日本のEC化率鈍化の一因だと考えられる。例えば、家電や電子書籍などはEC化が進んでいるが、食品業界や医薬品業界はITとの融合が遅れており、EC化が進んでいない。その背景には、企業がオンライン化に対応できていないことや、現金決済を好むシニア層が大きなシェアを占めていることがあると考えられる。

日本のEC化率向上には、メルカリやZOZOTOWNなどの革新的なサービスモデルを持つ企業の誕生が大きなカギを握ることになるだろう。

越境EC

中国人旅行客の「爆買い」でインバウンド需要が注目されたが、さらに大きなマーケットとして注目を集めているのが越境ECである。越境ECとはインターネット通販サイトを通じた国際的な電子商取引で、市場規模は2016年には全世界で約44兆円(4,000億USドルを1ドルあたり110円で計算)となっており、2020年には109兆円市場になると予想されている。越境EC分野で、その動向が最も注目されているのが中国である。中国は、2016に越境ECの新税収制度をスタートさせ、中国政府自身が越境ECを活用して税関の検閲が届く範囲内で海外商品を国内流通させる仕組みを提供しはじめており、世界中がその動向を注視している。越境ECの世界の市場規模は中国とアメリカを中心に2020年まで毎年、対前年20%以上で成長すると経済産業省は予測している。一方、日本は越境EC市場における販売国ではあるが、越境ECの購入額は少ない。これは日本語による障壁や、海外で商品を購入することに抵抗のある日本人が多いことなどが要因である。

このような状況の中、大手EC事業者は、越境ECへの本格参入を目指し、現地で倉庫や流通網を持つ企業を子会社化する準備を進めている。

出典:経済産業省「平成29年電子商取引に関する市場調査」

■BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移(単位:億円)

BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移

出典:経済産業省「平成29年電子商取引に関する市場調査」

■スマートフォン経由の市場規模の直近3年間の推移(単位:億円)

スマートフォン経由の市場規模の直近3年間の推移

出典:経済産業省「平成29年電子商取引に関する市場調査」

EC業界のM&Aは活況を呈している。主な買い手はネット通販や、メーカー、投資ファンドなどで、売り手は競争激化で苦境に立つ老舗通販事業者が目立つ。

また、リアル店舗を展開する小売・流通事業者がオムニチャネル化に向けてEC事業者を買収するケースも顕著である。典型的な事例としては、2016年9月に、京王百貨店(東京都)が衣料・キッチン用品などのECを展開するレクチュアー(東京都)を買収した事例である。京王グループは、EC事業会社の持つノウハウ、マーケティング力を活かして新たな事業機会を創出し、京王百貨店の既存顧客基盤の拡充を目指している。

さらに、EC業界では、同業種による販売品目拡充のためのM&Aの件数が増加傾向にある。2017年10月に、スタートトゥデイ(現在はZOZO)(千葉県)が、VASILY(東京都)の全株式を取得し、完全子会社化したケースが典型的な事例である。VASILYは、200以上のECサイトからファッションアイテムをユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを作成できるサービス「IQON」の運営や、その他ソフトウェアなどの受託開発を行う会社であり、スタートトゥデイは、同社の事業にVASILYが培ってきた開発技術を応用することで、さらなる成長を目指している。2018年8月には健康食品、化粧品を中心にインターネットやカタログによる通信販売業を行っているティーライフ(静岡県)が、ベビー用品、キッズ家具などを扱うセレクトショップ通信販売サイトを運営するLifeit(東京都)の全株式を取得し子会社化した。ティーライフはこの取引により、情報システムなどのプラットフォームを共有し、事業運営効率化を目指している。

EC市場はますます拡大傾向にあるものの、物流業界の人手不足やコスト上昇などを背景に各社の物流改革が課題となっており、今後もM&Aを活用した再編統合、協業強化の動きが国境を越えて活発化することが見込まれる。

ECは、アマゾンやアスクルのように自社直販型で展開する場合、倉庫・配送センターの運用・高度化に多大な設備投資が求められる。一方、楽天やヤフーのようなモール型の場合、比較的少ない投資でビジネスを立ち上げられる。それ故に多くの新規参入組が現れるが、顧客の支持を得て持続的にサイト運営をすることは簡単ではない。企業価値を判断する際は、財務諸表では参照できない登録会員数やアプリのダウンロード数などに目を配るようにしたい。

上場8社のEV/EBITDA倍率の平均は32.24で構成比では20倍~が全体の60%を占めている。しかし、サンプル数が少ないこともあり相対的な評価は困難である。

EV/EBITDA(eコマース業;n=8)

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