M&Aの業界動向 EC業界

2017年 業界動向

業界定義
コンピュータを介在したネットワーク上でおこなわれる物・サービスの販売または購買
(OECDによる定義)
業界シェア
業界トップは、アマゾンで売上高は、1兆1660億億円(2016年12月期/日本事業のみ:1ドル108円で試算)。2位は楽天で7,819億円(2016年12月期)、3位はアスクルで3,359億円(2017年5月期)となっている。
市場規模
15.1兆円

(経済産業省「2016年電子商取引に関する市場調査」)

成長率
9.9%増

(経済産業省「2016年電子商取引に関する市場調査」)

関連法規
特定商取引に関する法律

日本におけるECは「楽天市場」がスタートした1997年に幕を開けた。「楽天市場」は、プラットフォーム上に複数の店舗が出店するテナント型と呼ばれるECで、1999年にスタートした「Yahoo!ショッピング」も同様のビジネスモデルである。「Amazon.co.jp」は、2000年にサービスインし、2002年には出品型の販売形式「Amazonマーケットプレイス」をスタート、EC出店業者の拡大に大きく寄与した。2007年のiPhone発売を機にスマートフォンが普及するとECはさらに拡大。特に「メルカリ」などC to Cアプリが人気を呼び、利用者が急増した。一方、「EC-CUBE」に代表されるオープンソース系ECパッケージの登場により、中小企業でも容易に大企業並みのECサイトを構築可能になったことで、独立系ECサイトが増え、裾野が広がった。

EC業界において、今後の注目すべきキーワードはオムニチャネルと越境ECである。

リアル店舗、モバイル、ECサイトなど、あらゆる販売・流通チャネルを統合して顧客接点を多様化するオムニチャネルは、ECビジネスを成功に導くキーファクターといわれている。国内では、2015年にセブン&アイホールディングスがスーパー、コンビニ、ネットをシームレスにつなぎ、どこでも商品を購入・受け取れる「omni7(オムニセブン)」をスタート。ほかにも、資生堂やツタヤ(CCC)、無印良品など多くの企業がオムニチャネルに取り組んでいる。

しかし、米国では大手百貨店のメーシーズがオムニチャネルで失敗し、40店を閉鎖したこともあり、一時オムニチャネルに批判的な声が広がったのも事実だ。こうした中、オムニチャネルの先進事例として注目されているのが、Amazonの取り組みだ。Amazonは、2015年にシアトルでリアル書店「Amazon Books」を出店、その後も各地で出店を続け2017年時点で8店舗を展開。さらに、2017年6月には大手自然食品スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ」を137億ドルで買収した。店舗をECにおける生鮮食品の保管・配送拠点として併用し、リアル店舗との相乗効果を上げる狙いがあると思われる。

Amazonは、ほかにもレジのないコンビニ「Amazon Go」を出店、今後も家具や家電などのリアル店舗を計画中だといわれている。鮮度が求められる食品や高額商品、“ついで買い”など、ECが苦手とする分野をリアル店舗で補完し、さらに、店頭での顧客のふるまいをデータ化するAmazonの戦略は、オムニチャネルを成功に導く試金石として、今、世界の注目を集めている。

もうひとつのキーワードは、越境ECだ。越境ECとは、文字通り日本の商品を海外市場で販売するECのことだ。インバウンドによる「爆買い」が示すように、クオリティの高い日本製品は、中国に限らず世界中で需要が拡大しており、国内EC業者の多くがこの需要獲得に向けて越境ECを計画している。しかし、越境ECの実現には、翻訳、外貨決済、現地の流通、集客、法務など、多くのハードルがあり、参入は容易ではない。しかし、近年、越境ECを支援するサービスが続々ローンチされ、越境ECに取り組む事業者が増えてきた。その代表例が「楽天海外販売サービス」だ。これは初期費用・月額費用が無料でありながら、4カ国語自動翻訳や国際配送伝票作成、AlipayやUnionPayへの対応、集客サービスまでパッケージングされた越境EC専用サービスである。すでに楽天の中には越境ECだけで月商1,000万円を売上げるテナントもあるという。

こうした支援サービスが充実すれば、越境ECに参入する企業が増えていくだろう。

一方、大手EC事業者は、越境ECへの本格参入を目指し、現地で倉庫や流通網を持つ企業をM&Aで子会社化する準備をはじめているようだ。

日本のEC市場(B to C)規模の推移

越境ECの市場規模(2016)

業界で大きな流れとなっているのは、リアル店舗を展開する小売・流通事業者がオムニチャネル化に向けてEC事業者を買収するケースだ。2016年9月に、京王百貨店(東京)が衣料、キッチン用品・雑貨のECを展開するセレクチュアー(東京)を買収したケースは、その典型例である。京王百貨店は、EC専業会社の持つノウハウやマーケティング力を社内に取り込むとともに、京王グループ各社との連携を通じて事業機会の創出と顧客基盤の拡充を目指すと発表している。

件数が多いのは、EC事業者が取扱品目を拡充するために実施する同業者間のM&Aである。

インターネットで試供品を提供する「サンプル百貨店」を手掛けるオールアバウトライフマーケティング(東京)は、2014年7月に酒類・調味料の販売、清涼飲料および食料品を販売するシャンディー(東京)を子会社化した。その狙いは、シャンディーが保有する酒類販売業免許を取得し、ECでの酒類販売を行うことにある。

「earth music&echology」で知られるストライプインターナショナル(岡山)は、2016年10月に子供服・ベビー服・マタニティなどのECを展開するスマービー(東京)を株式譲渡によりグループ化。ヤングレディース向けEC「STRIPE CLUB」を展開するストライプインターナショナルは、ベビー・キッズ向けアパレルを強化することで、新たな購買層へリーチすることを目指している。

アパレル・ファッション雑貨、健粧品(健康食品・化粧品)の通信販売ならびECを手掛けるスクロール(静岡)は、化粧品及び化粧品雑貨の製造・販売を手掛けるナチュラピュリファイ研究所(東京)を子会社化した。スクロールは、100%天然由来成分の化粧品とドラッグストア・バラエティショップ向けコスメブランド「24h Cosme」をグループの商材に加えることで、EC事業の拡大に取り組む。

2016年9月に発表された楽天(東京)によるフリマアプリ「フリル」を展開するFablic(東京)のM&Aは、急成長中のC to Cビジネスにおける競争力強化が目的だ。実は、楽天自身2014年11月に「ラクマ」というフリマを展開していたが、成長スピードが上がらないことから、アプリダウンロード数500万を超える「フリマ」を買収し、C to C市場で先行する「メルカリ」を追走する狙いがあると考えられる。

2016年に15兆円の市場規模だったEC業界は、2020年に約20兆円に達すると予測されている。個人でも大手企業並みのインフラを利用できるクラウドが普及したことにより、EC業界では、今もアイデアひとつで爆発的なヒットを起こせる余地が残されている。数多くのベンチャーがひしめくEC業界では、今後もM&Aが日常的に行われ、市場は国境を越えて広がり続けると予想される。

ECは、アマゾンやアスクルのように自社直販型で展開する場合、倉庫・配送センターの運用・高度化に多大な設備投資が求められる。一方、楽天やヤフーのようなモール型の場合、比較的少ない投資でビジネスを立ち上げられる。それ故に多くの新規参入組が現れるが、顧客の支持を得て持続的にサイト運営をすることは簡単ではない。企業価値を判断する際は、財務諸表では参照できない登録会員数やアプリのダウンロード数などに目を配るようにしたい。

EV/EBITDA倍率はサンプル数が少ないこともあり大きなばらつきがあり、総体的な評価は困難である。

EV/EBITDA(eコマース業;n=7)

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