M&Aの業界動向 ドラッグストア業界

2017年 業界動向

業界定義
医療品、化粧品、日用雑貨(日用家庭品、文房具、フィルム、食品)を取り扱う小売店舗
(日本チェーンドラッグストア協会による)
業界シェア
業界トップは、ウエルシアホールディングスで売上高は6,231億円。2位はツルハホールディングスで5,770億円、3位はマツモトキヨシホールディングスで5,351億円となっている(2016年度)。
市場規模
6.5兆円

(2016年度、日本チェーンドラッグストア協会調べ)

成長率
5.9%増

(2016年度、日本チェーンドラッグストア協会調べ)

関連法規
薬事法、薬事法施行規則、薬剤師法、医療法

ドラッグストア業界は、「規模の経済」が働く業界であることから上位集中化が進行しており、すでに市場占有率はウエルシアホールディングス、ツルハホールディングス、マツモトキヨシホールディングス、コスモス薬局、スギホールディングスの上位5社で約5割を占めるまでになっている。

ドラッグストア業界は、粗利の高い大衆薬(一般用医薬品)を原資に、化粧品や食品などを低価格で販売することでスーパーなどから顧客を取り込み事業を拡大してきたが、次なる成長のターゲットは調剤薬局事業(処方箋が必要な薬の販売)である。
調剤薬局業界は、医薬分業が進む中で成長を続けてきたが、近年は分業率も頭打ちとなったことから出店余地がなくなり成長余力は乏しい。また、慢性的な薬剤師不足や、社会保障費圧縮のために収益を減らされ、業界の先行きは明るいとは言い難い状況にある。
ドラッグストアは、郊外の大型店やショッピングモール内などに出店し、買い物のついでに立ち寄ってもらうことで、周辺地域に住む患者の処方箋を取り込んでいる。現にドラッグストアに処方箋を持ってくる人の多くは、患者本人ではなく、患者の奥様(もしくは母親)である。また、ドラッグストアは調剤の支払いに対してポイントカードが使えることも強みとなっている(グレーゾーンであるが…)。そもそも薬価が決まっている調剤は割引ができないため、調剤薬局はこれに対抗する手段を持たない。同じ薬を処方してもらうのであれば、ポイントが付いた方がお得との認識が広がれば、ドラッグストアの調剤部門は、今後さらなる成長をする可能性が高い。
また、業界全体の課題といわれている薬剤師不足についても、巨大資本を持つドラッグストアは、その財力を生かした好待遇で薬剤師を積極的に採用している。もちろん、今後出店を加速する過程では、薬剤師が足らなくなるだろうが、そこは資本力でカバーしていくことが予想される。

「規模の経済」が強く働くドラッグストア業界では、今後、業界を揺るがせるような巨大再編が起きる可能性も否定できない。昨年度、ウエルシアホールディングスが業界トップに躍り出たが、その覇権がいつまで続くか、誰も予想はできない。

■ドラッグストアの総店舗数・企業数の推移

ドラッグストアの総店舗数・企業数の推移

出典:日本チェーンドラッグストア協会「2017年度日本のドラッグストア実態調査」

過去10年ほど続いていた業界再編の流れは一段落したため、ここ数年M&A件数はさほど多くない。形態は、同業者間における規模拡大型と、調剤機能を取り入れるためのM&Aの二系統に分けられる。

2015年1月から2017年上半期までの上場企業における同業へのM&Aは5件と、数は少なめだ。ツルハホールディングス(北海道)は、2015年2月に子会社のハーティウォンツ(広島)を通じて共栄ファーマシー(大阪)から広島県内のドラッグストア5店舗を譲り受け、同年4月にも愛媛県地盤のスーパーのフジ(愛媛)と共同で、中四国でドラッグストアなど約200店を展開するレディ薬局(愛媛)にTOBを実施して傘下に収めた。2016年4月、サンドラッグエース(北海道)は、ビルメンテナンスのエルディ(同)とドラッグストア運営のドラッグ・ユー(青森)からドラッグストア事業部門を会社分割により譲り受けた。同年5月には、ウエルシアホールディングス(東京)が群馬県を中心に55店舗のドラッグストア・調剤薬局を手掛けるクスリのマルエ(群馬)と業務資本提携を結んだ。2017年2月、ドラッグストアモリ(福岡)を傘下に持つナチュラルホールディングス(同)が中国四国地方東部に139店のドラッグストア・調剤薬局を展開するザグザグ(岡山)を子会社化している。

調剤機能を取り入れるためのM&Aに力を入れているのが、ココカラファイン(神奈川)だ。同社は子会社を通じて、2016年2月に調剤薬局経営の神戸マルゼン(兵庫)、同年7月に東洋薬品(北海道)の調剤薬局を譲り受け、12月に東邦調剤(東京)を買収、2017年2月に古志薬局(島根)、同年6月に調剤薬局と介護事業を手掛けるシニアコスモス(東京)を買収している。
ほかにも、2016年10月にクオール(東京)が共栄堂(新潟)を買収したケースや2017年4月にウエルシアホールディングスが丸大サクラヰ薬局(青森)を買収したケースも、調剤機能を強化するためのM&Aと考えて良いだろう。

ドラッグストア業界では、コンビニエンスストアやスーパーなど異業種・異業態間と販売する商品や販売方法が同質化し、価格競争に陥ったり、診療報酬改定に伴う薬価引下げなどの影響を受けて厳しい経営環境が継続している。一方、高齢化や予防医療の推進、健康食品市場の拡大などにより、市場自体は今後も成長が見込まれるため、地方の中小ドラッグストア同士の合併、大手同士の資本提携など業界再編がさらに進む可能性が高い。M&Aを進める場合、財務面だけではなく、営業エリアの人口構成や、在庫管理の仕組み、薬剤師の人数などにも着目したい。なお、主要企業20社のEV/EBITDA倍率は平均11.4倍と高い、M&Aを考えるのであれば3~5倍の範囲を目安にすると良い。

EV/EBITDA(ドラッグストア業;n=20)

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