M&Aの業界動向 化粧品・エステ業界

2019年 業界動向

業界定義
化粧品はメイクアップ化粧品、基礎化粧品や、歯磨き、シャンプーなどのトイレタリー製品を指し、美容・エステティックは健康や美容を増進させるために提供されるサービスのうち、医療行為でないものを指す。
(薬機法より)
業界シェア
化粧品業界トップは、資生堂で売上高1兆50億円、第2位は花王で売上高5,860億円、第3位はコーセーで売上高3,033億円。(2017年)
エステティック業界トップは、RVHグループで売上高410億円、第2位はTBCグループで300億円、第3位はシェイプアップハウスで179億円(2017年3月期)。
(出典:各社有価証券報告書、東京商工リサーチ)
市場規模
2.5兆円(化粧品)
3,579億円(エステ)

(矢野経済研究所「化粧品マーケティング総監2018」)
(矢野経済研究所「エステティックサロンマーケティング総監2018」)

成長率
3.0%増(化粧品)
0.2%増(エステ)

(矢野経済研究所「化粧品マーケティング総監2018」)
(矢野経済研究所「エステティックサロンマーケティング総監2018」)

2017年度の国内化粧品市場規模は2兆5,450億円で前年と比較して3.0%の増加となった。薬機法で定義されている「保湿」「肌にハリを与える」等々55項目の本来の化粧品の機能に加えて、小ジワ改善などの効果を持つ機能性化粧品の周知が進んだことが市場の拡大に影響を与えたと考えられるが、最も大きな影響を与えたのは訪日外国人数の増加だろう。訪日外国人数は2017年度に過去最高を記録し、約2,870万人であった。訪日外国人の半数近くが化粧品を購入し、平均購入額は約3万円。特に、訪日中国人からの人気が高く、約8割が化粧品を購入し、平均購入額は約5万円にのぼる。また、化粧品の品質の高さから、帰国後も百貨店やインターネットなどを通じて購入を継続する訪日外国人が増えたことや、口コミなどでブランドが周知されて、長期のリピーターが増加するという好循環も追い風となっている。

国内化粧品の価格帯別市場

訪日客の国別化粧品購入単価
単位:円

2017年度の化粧品市場をカテゴリー別に見ると、スキンケア市場が1兆1,850億円と最大で、メイクアップ市場5,752億円、ヘアケア市場が4,451億円、男性用化粧品市場が1,209億円、フレグランス市場が303億円と続いた。

化粧品市場の内訳

2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えていることやLCCの増加などによって、今後も訪日外国人数は増加すると見込まれており、それに伴い化粧品業界の市場規模は拡大すると予想される。

エステティック業界は、人材不足が経営の足を引っ張っている

2017年度のエステティック業界の市場規模は3,597億円で、前年と比較して0.2%の微増であった。エステ業界は少子高齢化や労働環境の悪化を背景に、エステティシャンの人材不足が深刻な問題となっている。美容業を展開する企業に人材の不足による経営悪化への影響を尋ねたところ、かなり影響があると回答した企業が21.2%、ある程度影響があると答えた企業が55.3%であり、全体の76.5%が人材不足によって悪影響を受けている状況だ。

人手不足による経営悪化への影響
出典:日本政策金融公庫

今後、国内人口が頭打ちになっていることから、成長率は鈍化するとアナリストは予想する。その中で活路を見出すためには、海外市場や、市場が低迷しているメンズエステ市場の開拓、ホスピタリティやエステサロン特有の空間などの付加価値を消費者に提供することや、優秀なエステティシャンやエステ業界の労働人口を確保するためにエステ業界の労働環境を改善することが必要である。

2017年度の化粧品業界で日本企業が関連した最大のM&Aは、2018年10月、ヘルスケア製品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソン(アメリカ)が、「ドクターシーラボ」を展開するシーズHD(東京都)を約2,300億円でTOBなどを通じて完全子会社化すると発表した案件だ。シーズHDは2017年11月に美容芸能事業を展開していたセドナエンタープライズ(東京都)や2016年にエステティックサロンのシーズ・ラボ(東京都)を子会社化するなど積極的にM&Aを行っていたが、今回はM&Aによってアメリカの大手ヘルスケア製品メーカーに買収されてしまった。日本の化粧品市場が拡大していることから、ジョンソン・エンド・ジョンソンは日本市場での優位性を高め、業績拡大の狙いがあると思われる。

業界トップの資生堂(東京都)が積極的なM&Aで業界をリードする。2016年に、メーキャップおよびスキンケアブランドをグローバルで展開するGurwitch Products(アメリカ)を買収した。2017年には、資生堂の連結子会社である資生堂医理化テクノロジー(京都府)と中国現地子会社である資生堂投資有限公司のクロマトグラフィー部門を、大阪ソーダ(大阪府)に譲渡。また、同年にサロン向けヘアケア製品を、アメリカ中心に70ヵ国で展開している連結子会社のZotos International(アメリカ)をHenke l AG & Co. KGaA(ドイツ)に、譲渡したが、2010年1月に子会社化したベアエッセンシャル(アメリカ)ののれんなどの減損損失655億円を計上している。ベア社の関係する減損は2013年3月期に続き二度目であり、グローバル展開で苦戦するケースも見受けられる。

異業種からの参入は、2013年に容器事業・充填事業の大手ホッカン・ホールディングス(東京都)が化粧品の開発、受託充填、販売を手掛けるコスメサイエンス(東京都)の全株式を取得し、孫会社化したケースがある。

エステサロン業界は約7割近くが個人経営のため、公開されているM&Aの情報は少ない。RVH(東京都)は2015年にジンコーポレーション(福岡県)から同社子会社であるミュゼプラチナムを完全子会社化すると、2017年にはたかの友梨ビューティークリニックを運営する不二ビューティーを完全子会社化、2018年にはレディスウェアを企画・製造・販売するラブリークイーン(岐阜県)を完全子会社化した。RVHはM&Aでグループを拡大させ、現在エステティック業界をリードする企業となった。

異業種から参入するケースは、三越伊勢丹ホールディングス(東京都)が、2016年12月にヘアサロン・エステサロン等を展開するSWPホールディングス(東京都)の全株式をポラリス・キャピタルグループから取得したケースだ。百貨店を運営する事業者がヘアサロン・エステサロン事業に参入することは珍しい。三越伊勢丹ホールディングスはエステをはじめとするトータル・ビューティーに関する事業のノウハウの獲得や、SWPホールディングスが子会社に持つソシエ・ワールド(東京都)における出店機会の獲得やシステム・物流等のインフラ強化・効率化等を通じた事業拡大を図っていくと予想される。

また異業種へM&Aで参入するケースもあり、2018年8月にRVHはブロックチェーン計算処理(マイニング)施設を運営するMinerGarage(東京都)を子会社化した。ブロックチェーンの技術を活用して、300万人以上の女性顧客の属性管理やポイントサービスの統一化などサービス拡大を意図していると考えられる。

EV/EBITDA倍率は平均20.6倍となっており、14倍以上で約55%を占めている。
化粧品は、製品需要が比較的安定しているうえ、基礎的な製造設備は長期にわたって使い続けられることもあり、売上高原価比率が低いが、その反面、売上高販管費比率が高いという特徴がある。これは美容部員の派遣や、訪問販売、売り場作りといったコストに加え、ブランド力が重要となるため広告宣伝に多くのコストを投じているためと推察される。生活必需品として安定した需要があるため業績悪化局面でも、大幅な赤字を計上する可能性は低い。一方、ブランド力が業績を左右するため、いかにブランド価値を高めるか、あるいはいかに価値を落とさないか、そこにかかる見えないコストを含めた企業価値の判断が求められる。

EV/EBITDA(化粧品業;n=20)

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