M&Aの業界動向 化粧品・エステ業界

2018年 業界動向

業界定義
化粧品は、「メイクアップ化粧品、基礎化粧品や、歯磨き、シャンプーなどのいわゆるトイレタリー製品」が該当する。美容・エステは、「健康や美容を増進させるために提供されるサービスのうち、医療行為でないもの」が該当する。
(薬事法より)
業界シェア
化粧品業界トップは、資生堂で売上高8,503億円、第2位は花王で売上高6,016億円(部門売上高)、第3位はポーラ・オルビスホールディングスで売上高2,184億円。エステ業界トップは、RVHで売上高333億円(部門売上高:2017年3月期)、第2位はTBCグループで300億円(2015年12月期)、第3位はシェイプアップハウスで179億円(2016年9月期)。
市場規模
2.6兆円(化粧品)
0.36兆円(エステ)

成長率
2.7%増(化粧品)
0.2%増(エステ)

化粧品業界は、訪日外国人観光客による“爆買い”が一段落、国内市場は頭打ち感があり、市場は今後も横ばいが続くと予想されている。

化粧品は、美容部員がカウンセリング形式で販売する対面販売と、ドラッグストアやコンビニなどの店舗販売がメインだが、訪問販売、通信販売品、EC、特定業者向け品など、流通チャネルのマルチ化が進んでいる。対面販売は高粗利だが、量販店向けの低~中価格帯商品は低粗利の上に販促費が高くなることから相対的に利益率が低い傾向がある。

市場全体が飽和する中で近年成長しているのは、化粧品OEMメーカーだ。化粧品OEMメーカーは、化粧品メーカーとの共同開発や、医薬品メーカー、食品メーカー、アパレル、通販事業者などからの委託によるプライベートブランド(PB)化粧品などの生産が伸びている。代表的な企業は、日本コルマー、紀伊産業、東洋ビューティー、トキワ、ピカソ美化学研究所、日本色材工業研究所などが挙げられる。市場拡大の背景には、2005年の薬事法改正により化粧品製造を全面委託できるようになったことや、化粧品メーカーの製販分離によるアウトソーシングの拡大、異業種による新規参入時の生産パートナーになっていることが考えられる。異業種からの新規参入は、富士フィルム、ロート製薬、ニチレイ、味の素などの大手メーカーが多く、いずれもコア事業で培った独自の素材や技術を活かしてオリジナリティあふれる化粧品を開発し、独自の存在感を放っている。

もうひとつの市場トレンドは海外進出である。国内市場の縮小を見越した大手メーカーは、海外を新たな成長市場として取り込む戦略に舵を切る。特に海外展開を強化しているのが資生堂だ。同社は、すでにベトナム、ギリシア、スイス、米国、韓国、トルコなどに進出。それを追うコーセーも、台湾、中国、韓国、香港、シンガポール、欧州、米国、アラブ首長国連邦などへ進出、M&Aで現地法人を傘下に収めるなど、積極的な市場開拓を行っている。

エステサロンチェーンは、出店が一巡し成長率が鈍化。美顔・痩身系では、中高年女性固定客のアンチエイジングのニーズを取り込むことで安定的な売上げがあるが、新市場として期待されたメンズエステは伸び悩んでいる。脱毛市場は、低価格の脱毛特化型エステティックサロンチェーンを中心に今も勢いが続いている。ネイル業界には、ネイルメーカー、サロン、ネイル教室、周辺事業者などプレイヤーが多様なことが特徴だ。市場売上高の8割を占めるネイルサロンは参入障壁が低く、民間資格はあるものの公的資格はなく個人宅ではじめる業者が多い。そのため知識や技術に差が付きやすく、顧客の爪にダメージを与えてクレーム沙汰になるケースも多い。ネイルメーカーは国内に数十社あるが、いずれも商品のブランド化ができておらず、雑貨レベルの商品との低価格競争に陥ることが多く、収益面では厳しい状況にある。

■国内化粧品の価格帯別市場
出典:富士経済「化粧品マーケティング要覧2017総括編」

国内化粧品の価格帯別市場

■エステティックサロン市場規模推移
出典:矢野経済研究所「エステティックサロンマーケティング総鑑 2018年版」

エステティックサロン市場規模推移

資生堂(東京)は、M&Aを積極的に活用して海外展開を加速。2016年6月には、全額出資子会社である資生堂アメリカコーポレーション(米国デラウェア州)を通じて、メイクアップおよびスキンケアブランドをグローバル展開するGurwitch Products, LLC(同)を買収。さらにアムウェイ(米国ミシガン州)などを傘下に持つアルティコア(同)の子会社Showcase Holdings、Inc.(デラウェア州)から全持ち分を取得。メーキャップブランド「laura mercier」、スキンケアブランド「RéVive」を取得した。 さらに、先進的な独自技術を持つIT系ベンチャーの買収にも注力している。2017年1月には、化粧品パーソナライゼーションに関する技術を開発したMATCHco(デラウェア州)を買収し、同年11月にもAIを使いパソコンやスマートフォンの画面上でメーキャップを施す技術を開発したGiaran Inc.(マサチューセッツ州)を買収、デジタル技術を用いて美容業界にイノベーションを起こすことを目指す。

業界3位のコーセー(東京)は、2017年1月にミルボン(大阪)と資本・業務提携を交わし、合弁会社コーセー ミルボン コスメティクス(東京)を設立、美容室向け化粧品の開発・販売に着手。美容室ルートを持たないコーセーと、高級化粧品市場にルートのないミルボンの思惑が一致して実現した提携といえる。

業界4位のポーラ・オルビスホールディングス(東京)は、2016年10月に連結子会社のPDC(同)の株式を山田養蜂場(東京)へ、フューチャーラボ(同)の株式をファーマフーズ(京都)に譲渡した。その狙いは、自社の強みであるダイレクトマーケティングに経営資源を集中し、収益基盤を強化することにある。

その他の化粧品業界におけるM&Aとしては、シーズ・ホールディングス(旧ドクターシーラボ)(東京)が2016年2月にエステサロン・メディカルエステ店を展開していたシーズ・ラボ(同)の株式を70%取得し連結子会社化した案件や、女性用アパレル・雑貨の通販を手掛けるスクロール(静岡)が、2017年1月に天然由来成分の化粧品等を製造・販売するナチュラピュリファイ研究所(東京)、同年4月にコスメブランド「TV&MOVIE」を展開するT&M(同)、5月に資生堂の子会社で化粧品ブランド「草花木果(そうかもっか)」を展開するキナリ(同)の買収を発表した。 異業種参入組では、2016年5月にイスラエルの自然派化粧品「ラリン」を販売するラリンジャパン(福岡)の発行済み株式70%を取得して子会社化したアパレル企業のTSIホールディングス(東京)などがある。

エステ業界は、M&Aで新規参入する異業種企業に注目したい。特に話題を集めたのは、2016年1月に東証2部上場のシステム開発会社RVH(東京)が、経営不振に陥っていた脱毛サロンを展開するミュゼプラチナム(同)を完全子会社化してエステ業界へ新規参入を果たしたことだ。同社は、2017年2月にも「たかの友梨ビューティクリニック」を運営する不二ビューティ(同)を買収し、本格的にエステ事業に乗り出している。 2016年11月にはIT企業のソフトフロントホールディングス(東京)がエステティックサロン「Belle lumiere」を展開するグッドスタイルカンパニー(静岡)を買収、さらに同年同月、化粧品メーカーのシーズ・ホールディングスが大都市圏を中心に美容脱毛エステサロン、痩身エステサロンを65店舗展開するセドナエンタープライズ(東京)を買収、同年12月には、三越伊勢丹ホールディングス(東京)がエステティックサロン「ソシエ」を運営するソシエ・ワールド(同)の持株会社SWPホールディングス(同)を買収し、大きな話題を呼んだ。

エステ業界は、以前から契約トラブルや労働環境などが問題視されており、市場拡大には、業界全体の浄化が必要との声がある。異業種からM&Aで参入した大手上場企業には、こうした悪習から脱却し、業界全体のコンプライアンス強化を進め、市場の健全な成長を促す効果を期待したい。

化粧品は、製品需要が比較的安定しているうえ、基礎的な製造設備は長期にわたって使い続けられることもあり、売上高原価比率が低いが、その反面、売上高販管費比率が高いという特徴がある。これは美容部員の派遣や、訪問販売、売り場作りといったコストに加え、ブランド力が重要となるため広告宣伝に多くのコストを投じているためと推察される。生活必需品として安定した需要があるため業績悪化局面でも、大幅な赤字を計上する可能性は低い。一方、ブランド力が業績を左右するため、いかにブランド価値を高めるか、あるいはいかに価値を落とさないか、そこにかかる見えないコストを含めた企業価値の判断が求められる。EV/EBITDA倍率は平均18.9倍となっている。

EV/EBITDA(化粧品業;n=14)

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