M&Aの業界動向 化粧品・エステ業界

2015年 業界動向

業界定義
化粧品は、「メイクアップ化粧品、基礎化粧品や、歯磨き、シャンプーなどのいわゆるトイレタリー製品」が該当する。
美容・エステは、「健康や美容を増進させるために提供されるサービスのうち、医療行為でないもの」が該当する。
(OECDによる定義)
業界シェア
化粧品業界トップは、資生堂で売上高7,620億円、第2位は花王で売上高5,703億円、第3位はポーラ・オルビスホールディングスで売上高1,913億円。
エステ業界トップは、TBCグループで売上高360億円、第2位はジンコーポレーションで319億円、第3位はシェイプアップハウスで227億円(2014年3月期)。
市場規模
2.3兆円(化粧品)
0.36兆円(エステ)

成長率
1.3%増(化粧品)
1.8%増(エステ)

経済産業省の生産動態統計によると、国内化粧品の出荷個数は年々増加傾向にあり、2013年は年間27億個を超えた。販売金額は2010年以降漸減傾向にあったが、2013年は一転して増加に転じている。

2013年度の製品分野別市場は、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、男性用化粧品の全カテゴリーで前年度実績をクリア。 全体でみると、女性用化粧品市場は飽和状態にあるが、近年、男性用化粧品が急激に伸びている。清潔感を意識する男性が増加したこともあり、市場規模は推計190億円まで拡大した。男性用化粧品首位のマンダムは、2014年3月期業績において売上、利益ともに過去最高を記録。ロート製薬の男性用ブランド「デ・オウ」は2013年春の発売以来、計画比130%強で伸びている。

しかし、人口減少もあり長期的にみると国内市場は縮小傾向にあり、化粧品メーカーの伸びしろは少ない。各社は、将来を見越し、成長市場のアジア新興国に視線を向けている。資生堂は、インドやドバイに合弁会社を設立する一方、「カリタ」「デクレオール」などのブランドを仏ロレアルに売却、成長性の高いブランドに注力。コーセーも、現在売上高の12%を占める海外比率を3倍以上に引き上げる方針を掲げている。

エステ業界は、大手エステティックサロンを中心に既存店強化策が奏功し、単価や来客数減に歯止めがかかったが、景気低迷の影響により業績は厳しい。特にトータルエステサロンは苦戦を強いられている。一方、「痩身」や「脱毛」などに専門特化したチェーンの増加・躍進が目立つ。中でも、脱毛専門の低価格チェーン「ミュゼプラチナム」を展開するジンコーポレーションの伸長ぶりは群を抜いている。

国内化粧品総市場規模の推移 ミュゼプラチナムの売上と店舗数推移

化粧品業界では、大手による海外企業のM&Aと、事業を補完する形での国内M&Aが目立つ。

海外企業のM&Aでは、資生堂による米ベアエッセンシャル(BE)の大型買収が話題になったが、それに続くように2011年5月にはポーラ・オルビスホールディングスが化粧品大手のエイチツーオー・プラスホールディングス(アメリカ)を、2011年にはジュリーク(オーストラリア)を買収。2014年3月には、コーセーが北米、タイ、マレーシアなど6カ国で計1500店舗を展開している自然派化粧品のタルト(アメリカ)を買収した。各社は、買収企業とのシナジーを発揮し、海外展開を推し進めていく戦略だが、その効果が現れるには相応の時間がかかるとみられる。実際、資生堂は、BE取得時に計上したのれんの減損処理を行ったため、2013年3月期決算で特別損失を計上し最終赤字となった。BEの商品は資生堂と補完関係にあるため、米国市場開拓の有効な手段になるとみられているが、まだその成果は現れていない。一方、件数は少ないが海外企業による日本企業買収の動きも見られる。韓国のヘルスケア最大手LG生活健康社は、2012年2月に化粧品通販の銀座ステファニー(東京)を、同年12月にも健康補助食品「皇潤」を展開するエバーライフ(福岡)を傘下に収め、国内市場へ参入した。

一方、国内では、2013年9月に、小林製薬がジュジュ化粧品(神奈川)の化粧品事業会社を連結子会社化し、スキンケア事業の強化に乗り出した。また、インテリアや雑貨、オーガニックコスメなどを展開するイデアインターナショナル(東京)は、2014年2月に日本リレント化粧品(埼玉)の全株式を取得。同年3月には「スクワラン」を展開するハーバー研究所が連結子会社のビューティージーンを吸収合併した。

異業種による国内M&Aでは、容器事業・充填事業の大手ホッカン・ホールディングスが化粧品の開発、受託充填、販売を手掛けるコスメサイエンス(東京)の全株式を取得し、孫会社化したケースがある。

エステサロンの経営主体は、約7割近くが個人経営のため景気に左右されやすく、近年は厳しい経営を強いられている。一時期、好景気の波に乗り、地方で20~30店舗を展開した中堅チェーンも、その勢いに陰りが見える。今後は、店舗数拡大を目指す「ミュゼプラチナム」のような専門特化・低価格型チェーンによる地方チェーンのM&Aが進むと予想される。

化粧品は、製品需要が比較的安定しているうえ、基礎的な製造設備は長期にわたって使い続けられることもあり、売上高原価比率が低いが、その反面、売上高販管費比率が高いという特徴がある。これは美容部員の派遣や、訪問販売、売り場作りといったコストに加え、ブランド力が重要となるため広告宣伝に多くのコストを投じているためと推察される。生活必需品として安定した需要があるため業績悪化局面でも、大幅な赤字を計上する可能性は低い。一方、ブランド力が業績を左右するため、いかにブランド価値を高めるか、あるいはいかに価値を落とさないか、そこにかかる見えないコストを含めた企業価値の判断が求められる。

EV/EBITDA(化粧品・エステ業;n=14)

Page Top