M&Aの業界動向 自動車業界

2015年 業界動向(部品)

業界定義
主として各種自動車の完成品及び自動車シャシーの製造並びに組立てを行う事業所
(総務省「日本標準産業分類」より)
業界シェア
国内の業界トップ3は、第1位がデンソーで売上高は3兆5809億円、第2位がアイシン精機で売上高2兆5299億円、第3位が豊田自動織機で売上高1兆6152億円となっている。(2013年3月期)。
市場規模
22兆円

(「業界動向SEARCH.com」2012-2014年版)

成長率
1.7%減

※過去5年の伸び率
(「業界動向SEARCH.com」2012-2014年版)

関連法規
道路運送車両法、使用済み自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

日本の自動車部品メーカーは、いわゆる「系列」での取引により事業を拡大してきた。しかし、現在は「系列」を超えたグローバルな取引が拡大傾向にある。その背景にあるのは、新興国市場の進展に伴うグローバル競争の拡大だ。世界の新車販売台数全体に占める新興国の割合は2000年には約24%だったが、2013年には約56%となり、2024年には65%まで拡大すると予想されており、今後の市場を新興国が牽引することは疑いの余地がない(図)。

完成品メーカーは、新興国市場の厳しい競争を勝ち抜くため、安価な車種を大量に生産したいと考えている。そのための最重要戦略が部品のモジュール化だ。高級車から大衆車まで複数の車種で共通モジュールを利用すれば、大幅なコストダウンを図りながら、市場ニーズに応じた車種を効率的に生産できるからだ。これを全世界的に展開する手法は「メガプラットフォーム戦略」と呼ばれており、フォルクスワーゲンの「MQB」、日産・ルノー連合の「コモン・モジュール・ファミリー(CMF)」、トヨタの「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ(TNGA)」が知られている。

メガプラットフォーム化が進むと、モジュールの供給規模は数十万個単位から数百万個単位へ拡大する。この流れは、高い生産能力や資金力を持つデンソー、アイシン精機、ボッシュ、コンティネンタルなどのメガサプライヤーにとっては事業拡大のチャンスとなるが、リソースの少ない中小の部品メーカーには厳しい環境といえる。中小の部品メーカーの対抗策としては、海外進出を前提としたM&Aや事業連合により生産能力を高める方法、メガサプライヤーとの提携を進める方法、独自技術や品質に磨きをかけて小規模でも収益力の高い事業を志向する方法などが考えられる。

一方、自動車部品市場には、もうひとつ潮目を変える流れがある。それはEVやHV、FCVなど次世代自動車へのシフトだ。これまでは、次世代自動車は高額なので先進国が主要市場であり、新興国では安価なエンジン車が主流だといわれてきた。しかし、今後、この状況は一変する可能性が高い。その要因は排ガスによる大気汚染だ。2012年に大気汚染による死者は700万人を超え、その大半は中国とインドが占めている(※)。その主たる原因は自動車の排ガスだとされている。これを受けて、多くの新興国では、ガソリン車の新車販売を規制する方向で検討が進められている。規制が進めば、ガソリン車から次世代自動車へのシフトが進み、エンジンや吸排気系部品のメーカーは、事業の存続が危ぶまれることになる。こうした将来の動向を見据え、多くの部品メーカーは技術移転やエレクトロニクスメーカーとの事業連携、M&Aなどを模索し始めている。

日本経済の成長に貢献してきた自動車産業、その足元を支えてきた自動車部品業界は、今歴史の転換点に立たされている。

(※)WHO(世界保健機構)調べ

■世界新車販売台数推移と予想(図1)
出典:「FOURIN世界自動車統計年刊2013」

2014年9月、ドイツの自動車部品大手ZFが、アメリカのTRWオートモーティブを買収すると発表した。負債を含む買収額は約1兆4400億円。これによりZFの売上高は約4兆1700億円に達し、デンソーを抜き業界3位に浮上する。ZFの市場における地位は、これにより揺るぎないものになる。これほどの大型案件は続かないだろうが、今後も自動車部品業界のM&Aはグローバルレベルで進むことは間違いない。

国内の大手部品メーカーでは、現地における生産拡大やシェア拡大に向けて海外企業を取り込むケースが増えている。デンソーは、2013年4月にインドの自動車用部品メーターの製造会社プリコール社に出資し、2014年8月には中国のコンプレッサーメーカー合肥達因汽車空調有限公司に出資した。カルソニックカンセイは、2013年3月にラーセン&トゥブロ インテグレーテッドテクノロジーサービス社と提携し、インドに Calsonic Kansei Engineering Center India-L&Tを設立、同年12月にはタイで熱交換機、吸排気機器を手掛けるサイアム・カルソニック社への出資比率を引き上げ連結子会社とした。また、豊田自動織機は2014年9月に、台湾の建機・工作機械メーカーのタイリフト社からフォークリフト事業を買収すると発表、中国での産業用車両販売を強化する方針だ。

一方で近年、目立つのが次世代自動車の普及を見据えた機械部品メーカーとエレクトロニクス系メーカーの連携だ。アイシン精機は、2012年7月に独立系の日出ハイテックの株式を買い取り持ち分法適用会社にした。日出ハイテックは半導体の回路設計を手掛ける企業で、アイシン精機の狙いは自動ブレーキ制御などエコカーに欠かせない技術の取り込みにあると考えられる。一方、バッテリー大手のジーエス・ユアサ コーポレーションは、ドイツのボッシュ、三菱商事と提携し、シュツットガルトにリチウムイオン電池の開発と販売を手掛ける合弁会社を設立した。同社は、今後中国にも新工場を立ち上げる検討を進めているという。なお、次世代自動車開発においては、民生用エレクトロニクスを手掛けていた企業が自動車部品メーカーと連携するケースも目立つ。2014年9月には、パナソニックがスペインの自動車用ミラー大手フィコサ・インターナショナルと出資交渉していることが明らかになった。パナソニックは、トヨタやフォルクスワーゲンにリチウムイオン電池を供給する形で自動車産業に進出していたが、今回はフィコサ社の技術と自社の車載用センサーを組み合わせて先進運転支援システム(ADAS)分野での共同開発を行う狙いがあると見られる。こうした流れは世界的なトレンドとなっている。

自動車部品業界の再編劇は、幕を開けたばかりの状況にあり、今後数年間は、国内部品メーカー同士の「系列」を超えた連携や、メガサプライヤーによる国内部品メーカーとの統合、M&Aによる異業種からの参入など、さまざまな形でM&Aが増大すると予想される。

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