M&Aの業界動向 自動車業界

2015年 業界動向(メーカー)

業界定義
主として各種自動車の完成品及び自動車シャシーの製造並びに組立てを行う事業所
(総務省「日本標準産業分類」より)
業界シェア
国内の業界トップ3は、第1位がトヨタ自動車で売上高は25億6919億円、世界生産台数911万台、第2位がホンダで売上高11兆8425億円、世界生産台数432万台、第3位が日産自動車で売上高10兆4825億円、世界生産台数518万台。(2013年3月期)。
(出典:日本自動車工業会)
市場規模
58兆円

※二輪車、車体・付属車、部分品・付属品含む
(経済産業省「工業統計調査」2013年速報)

成長率
2.6%増

※国内出荷金額ベース
(経済産業省「工業統計調査」2013年速報)

「経済産業省生産動態統計」によれば、2013年の四輪自動車の国内出荷額は18兆9349億円で前年比1.06%増、国内販売台数は973万台で1.01%減だった(※1)。上半期は、エコカー補助金終了による反動減に見舞われたが、下半期は前年同月比増加に転じ、通年では前年並みを維持した。しかし、2014年4月の消費税増税を機に市場は低迷し、9月の国内販売台数は3か月連続で前年割れ。9月の新車登録台数は前年同月比2.8%減の31万5326台、一方、軽自動車は同2.5%増の20万3448台、軽自動車のみ3か月ぶりのプラスを記録した(※2)。

国内市場全体では、少子高齢化や若者の車離れ等の構造的要因を背景に、今後、自動車販売台数は減少に向かうと予想されている。また、近年の車種別自動車販売台数の構成推移によると、排気量660cc以下の軽自動車の増加と、1700 cc以上の減少傾向というダウンサイジング傾向が見られる。この2つの要因を重ね合わせて、国内市場は縮小の一途を辿ると予測するエコノミストやアナリストも少なくない。しかし、統計値を調べてみると、必ずしも市場縮小という言葉が当てはまらない現状が見えてくる。

「経済産業省生産動態統計」によれば、たしかに販売台数は微減傾向だが、一方で販売金額はおおむね右肩上がりにあることがわかる(図1)。これは、1台当たりの単価が上がっていることにより、金額ベースの市場が拡大傾向にあることを示している。その背景には、各社が新しい技術やコンセプトを投入し、付加価値の高い自動車を生み出してきたことがある。たとえば、ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)をはじめとするエコカーは、低燃費や環境負荷が低いといった付加価値により、ガソリン車より価格が高くても常に販売台数の上位にランクされている。同様に、軽自動車は普通車並みの車内スペースや装備を実装しながら、維持費が安いため普通車より価格が高くても選ばれる傾向にある。また、障害物を検知して衝突を回避する「自動ブレーキ機能」や、駐車するときに便利な「バックモニター」、インターネット連動型の情報サービス「テレマティクス」など、安全性や利便性を高める機能を搭載した車種は、販売金額が高くても消費者から受け入れられる傾向にある。

今後の市場で、注目されるのは水素で駆動する燃料電池車(FCV)である。政府が掲げる「日本再興戦略」において、FCVや水素インフラに係る規制を見直すとともに「水素ステーションの整備を支援することにより世界最速(でFCV)の普及を目指す」と明記されており、その流れが自動車市場をけん引すると予想される。トヨタは、2014年度内にFCVの市販を宣言し、ホンダは2015年、日産・ルノー連合は2017年に市販化を予定している。FCVの普及が加速すると、異業種参入も相次ぐと予想されており、内燃機関製造にかかわってきたサプライヤーへの影響は甚大で、業界地図を一変させる可能性も秘めている。

(※1)出典:「経済産業省生産動態統計」2013年報
(※2)出典:日本自動車販売協会連合会、全国自動車協会連合会

■国内四輪自動車の販売数量と販売金額の推移(図1)
出典:「経済産業省生産動態統計」2013年報

■FCVと水素ステーションの普及に向けたシナリオ
出典:燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)

(注)図の縦軸はFCVの台数と水素ステーションの設置数の相対的な関係を示すもの

1990年代、「400万台クラブ」という言葉が自動車業界を賑わせた。これは1998年にダイムラー・クライスラーという超大手メーカー同士が誕生したことを機に、年間400万台生産できないメーカーは淘汰されるとの論が発端となり、巻き起こった大規模な業界再編劇だった。この流れに乗り、世界中のメーカーがM&Aや事業提携を進めた。日本でも、スズキと富士重工はGMと、マツダはフォードと、三菱自動車はダイムラー・クライスラーと資本業務提携を結んだが、いずれも相乗効果が上がらず、現在では提携を解消している。

その後、M&Aは沈静化したかに見えたが、リーマンショック後にクライスラー、GMが経営破綻したことをきっかけに、新たな合従連衡の動きがはじまった。日産とルノーの提携を筆頭に、BMWがロールスロイスとミニを傘下に収め、フォルクスワーゲンはポルシェ、アウディ、ベントレー、ランボルギーニなどをグループに加え、中国企業連合NEVSがサーブを買収、フィアットはクライスラーを100%子会社化した後、中国東風汽車と資本提携するなど、国境を越えたM&Aは枚挙に暇がない。その目的は、プラットフォーム共通化を進めてコストダウンを図り新興国市場を確保することと、コストと時間がかかる次世代自動車技術の研究開発を加速すること、さらに知的財産の共有により新車開発をスピードアップすることなどが考えられる。

20年前は「400万台」が生き残りの条件とされたが、今ではトヨタ自動車グループ単独で生産台数1000万台を超えており、これに続くGM、フォルクスワーゲンも900万台を超えた。日産・ルノーグループもロシアの大手自動車会社アフトワズを傘下に入れたことで、1000万台が視野に入ってきた。今後、自動車業界は、この4強を軸に再編が進む可能性が高い。

今後の注目は、日本の中堅メーカー、マツダ、スズキ、三菱自動車工業、富士重工の動向である。マツダは、トヨタからハイブリッド技術の供与を受けたり、メキシコ工場でトヨタ車を生産するなど提携を深める一方、スポーツ車の共同開発・生産で提携するフィアットとの連携を深めている。軽自動車の雄であるスズキは、インドをはじめ新興国で高い存在感を示しており、今後台風の目となる可能性が高い。三菱自動車工業は、日産・ルノーアライアンスとの連携を模索し、富士重工は、トヨタから16.5%の出資を受けて共同でスポーツ車を開発するなど連携を深めている。

一方、次世代自動車分野では、テスラモーターズのようなベンチャーの台頭や、グーグルによる自動運転システムの開発など業界の枠を超えた動きが加速しており、予想外の資本提携やM&Aが起きる可能性も高く、10年後の業界地図を予想することは非常に難しい。

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