M&Aの業界動向 ビルメンテナンス

2017年 業界動向

業界定義
ビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請け負い、これらのサービスを提供する業(ビルメンテナンス業)および主としてビルなどの建物を対象にして清掃、保守、機器の運転、その他維持管理についてサービスを提供する業(その他の建物サービス業)
(総務省日本標準産業分類より)
業界シェア
業界トップは、イオンディライトで売上高は2,947億円(2017年2月期)。第2位は共立メンテナンス1,358億円(2017年3月期)第3位は東急コミュニティー1,247億円(2016年3月期)となっている。
市場規模
3.8兆円

(2015年現在 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会HPより)

成長率
3.3%増

(2015年現在 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会HPより)

ビルメンテナンス業界全体の売上高は引き続き堅調に推移している。オフィス空室率は低水準で推移、賃料は改善傾向にあり、ビルメンテナンス業界にも恩恵をもたらしている。しかしながら中小のビルメンテナンス企業の経営環境は厳しい。

足元の課題は、人材不足である。東京オリンピックの関連需要拡大により、特に都心部では業界問わず人材不足が深刻である。労働集約型の業界において、人材不足は業容の縮小や人件費の高騰による利益の圧迫等、経営危機をもたらす。人材確保が難しい中小企業には厳しい環境だ。事業者が多いのも業界の特徴で、価格競争による単価の下落がつきまとう。異業種の参入意欲も継続して旺盛だ。市場全体の売上高が増加しても、中小企業が潤っているとはいえない。

また、東京オリンピックまでは関連需要に期待できるが、以降の市場にはリスクがある。大幅な市場の縮小があった場合、生き残るのは、高付加価値な総合サービスを提供し、海外展開をしている大手企業だけではないか。

直近のビルメンテナンス業界のM&Aは「国内の大手集約」「海外展開」「総合サービスの提供」と「選択と集中」に特徴がある。

白青舎は、2015年12月にイオンディライトのTOBを受入れイオンディライトの傘下に入った。イオンディライトの傘下で、営業力強化や、コスト削減、品質強化、事業開発を強化する。今後の成長機会が限定的な市場において、顧客ニーズは多様化・高度化しており、IT等高度な技術・ノウハウ、業務標準化、コンサルティング営業や品質保証等、知的資本を集約させる必要がある。これら高度な技術・ノウハウ・人材の獲得には多額の投資が必要で、業界内で多数を占める中小企業ではこのような対応は困難であり、イオンディライトは、業界内で「国内の大手集約」が進行すると考えている。

また、イオンディライトは、2012年BPO事業を展開するジェネラル・サービシーズの買収で「総合サービスの提供」に磨きをかけ、2013年中国の武漢小竹物業管理の買収し、「海外展開」を加速させている。一方で、2016年1月に本業ではないマンション管理事業を穴吹ハウジングサービスに譲渡している。大手だからといって買収だけとは限らず、事業の売却により、「選択と集中」を行う、賢いM&A戦略といえる。

また、京都を中心に関西圏に強みがあり、年商21億円の協栄ビル管理は、2016年8月ハリマビステムに株式を売却、傘下に入っている。「国内の大手集約」の典型例である。独自経営は魅惑的だが、安定的な経営基盤の確立、業務の効率化、新規営業での営業力の強化という経営目的の達成を優先させる将来を見据えた英断である。

日本ハウズイングは、2016年3月にベトナムの最大手清掃企業を買収し、更に2016年12月にシンガポールの建築設備のエンジニアリング及びファシリティマネジメント企業の買収を発表、アジア市場の開拓に積極的である。業界で生き残るためには、「海外展開」を考えなければならない。

上場企業のEV/EBITDA倍率の平均は8倍となっている(n=11)。業界の成長性、競争環境が影響し、上場企業に対する評価は高いといえないが、数年前と比較して高い水準を維持している。M&Aにおける買収価額は、業界の上場企業の株価の影響を受ける。

EUや米国、中国の景気動向等不確実性が存在し、株価が大幅に下落する可能性も否定できない。また東京オリンピック後の市場動向が読めないこのタイミングでM&Aの準備をすることを視野に入れたい。

EV/EBITDA

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