M&Aの業界動向 ビルメンテナンス

2016年 業界動向

業界定義
ビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請け負い、これらのサービスを提供する業(ビルメンテナンス業)および主としてビルなどの建物を対象にして清掃、保守、機器の運転、その他維持管理についてサービスを提供する業(その他の建物サービス業)
(総務省日本標準産業分類より)
業界シェア
業界トップは、イオンディライトで売上高は2,810億円(2016年2月期)。第2位は共立メンテナンス1,350億円(2016年3月期)第3位は東急コミュニティー1,247億円(2016年3月期)となっている。
市場規模
3.8兆円

(2015年現在 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会HPより)

成長率
3.3%増

(2015年現在 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会HPより)

ビルメンテナンス業界の売上高は、若干増加傾向である。都心部のオフィス空室率も改善しており、需給の緩和が伺える。しかしながら、経営者を悩ます経営課題は山積しているようだ。

従業員の採用難は日々厳しさを増し、今や経営のアキレス腱になっている。募集費の増加は利益を圧迫するし、人手不足により新規案件の受託を断念するケースや、既存物件のシフトに苦労している事業者も多い。同業他社間の人材獲得競争だけでなく、すべての業界との競争に気が抜けない。同業他社間の価額競争が厳しい事も、事業者が多いこの業界の特徴である。限られた市場の中で、多くの事業者が、入札や見積もりによる取引業者の変更や単価の減額でしのぎを削る。

さらに消費増税の影響もある。前回の増税と同様にビルオーナーのコスト意識は高まると予想される。

このような状況の下、安定した利益を確保するためには、「国内集約」「海外展開」「総合サービスの提供」の3つの目標の達成が不可欠である。

直近の業界におけるM&Aは、「国内集約」「海外展開」「総合サービスの提供」の3つの経営目標を達成する手段として積極的に活用されている。他の業界と比べてもM&Aニーズが非常に多い事も特徴である。

ジャスダックに上場していた総合ビルメンテナンス事業を展開する白青舎は、2015年12月イオンディライトの傘下に入る事となった。「国内集約」の例であるが、白青舎は、海外展開に強く、総合メンテナンス企業であるイオンディライトと協業することにより、3つの目標すべてを達成できる。喫緊の経営課題の前で独自経営か否かは、些末な問題である。また、イオンディライトは、このM&Aで営業力強化、業務品質・コスト競争力の強化、事業開発、バックオフィス効率化等のシナジーを見越している。「海外展開」特に、成長性の高いアジアへの進出のため、アジア企業のM&Aを仕掛ける企業も目立つ。大成は、2015年9月に香港のビルメンテナンス企業を買収した。大成は、グローバル事業への挑戦を課題として掲げ、東南アジアからの人材の受入れをはじめ、数年後は同エリアにおけるビルメンテナンス事業の展開を視野に入れる。また、日本空調サービスは、2015年11月にシンガポールの空調メンテナンスサービス企業を買収した。シンガポールでの事業基盤を固め、東南アジア地域での事業拡大に繋げるとしている。機械警備業務とビルメンテナンス業務を行う東洋テックは、2015年7月に、清掃業務を展開する大阪ビルサービスを買収した。この買収により事業の多角化を図り、グループの収益基盤強化を実現できる。清掃等のノウハウの吸収により、「総合サービスの提供」を目指す動きといえる。

上場企業のEV/EBITDA倍率の平均は10倍となっている(n=11)。業界の成長性、競争環境が影響し、上場企業に対する評価は高いといえないが、5年前が約4倍だったことより相当高くなっている。M&Aにおける買収価額は、業界の上場企業の株価の影響を受ける。中国の景気動向等、株価が大幅に下落する可能性も否定できない中、このタイミングで譲渡の決断や準備をすることを視野に入れたい。

EV/EBITDA

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