M&Aの業界動向 ビルメンテナンス

2015年 業界動向

業界定義
ビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請け負い、これらのサービスを提供する業(ビルメンテナンス業)および主としてビルなどの建物を対象にして清掃、保守、機器の運転、その他維持管理についてサービスを提供する業(その他の建物サービス業)
(総務省日本標準産業分類より)
業界シェア
業界トップは、イオンディライトで売上高は2,572億円。第2位は、東急コミュニティーで売上高は1,191億円(2013年9月に経営統合により上場廃止)、第3位は共立メンテナンスとなっている。(2014年3月期)
市場規模
3.6兆円

(全国ビルメンテナンス協会資料より)

成長率
2.9%増

(全国ビルメンテナンス協会資料より)

業界全体の売上高は2年連続で増大している。2012年は、東日本大震災からの復興需要、2013年はアベノミクスによる景気改善効果が売り上げを押し上げた要因と推測される。現在も、都心部ではオフィス需要が旺盛で新規物件が増えているが、今後も市場の右肩上がりが続くとは考えにくい。その理由は、新規物件にテナントが集中する一方で、市場全体を見ると、多くの物件では空室率が上昇し、賃貸料は低下傾向にあるからだ。

人口減少が続く国内状況を考えれば、オフィスや店舗、病院、公共施設などの管理物件が増え続けることは期待できない。市場全体が縮小し、限られたシェアを多くの企業で奪い合う状況になることは避けられない。こうした市場傾向を見据え、各社が力を入れているのが「ビルメンテナンス」から「総合ファシリティマネジメントサービス(FMS)」へのシフトチェンジである。総合FMSとは、従来型の施設管理の枠を超えた総合的なサービスを提供することで、施設の効率的利用やコスト削減を図り、入居者(テナント)の満足度を高め、資産価値を向上させるサービスのことである。各社はFMS事業への転身を目指し、これまで外注していた資材調達や営繕工事などの周辺業務を取り込んだり、入居テナントに対してセキュリティやBPO(ビジネスの間接業務委託)、BEMS(ビルエネルギー管理システム)などの付加価値サービスを提供したり、物件内での小売りや飲食などを自ら手掛けるなど経営の多角化に取り組み始めている。

業界トップのイオンディライトは、総合FMSへの転身を宣言し、すでに4期連続の売上高増、10期連続の増益という結果を出している。業界では、ほかにも東京ガス都市開発がインターネットを通じて空調温度変更や夜間・休日在館申請、作業届の申請、管球交換などを利用できるサービスの提供を始めるなど、各社が総合FMS化に向けた事業拡張に取り組んでいる。

ビルメンテナンス業界の売上高推移(出典:社団法人全国ビルメンテナンス協会)

新規物件の減少に伴うシェア獲得競争が激化する中、大手事業者はストック拡大を目指し地方の中小事業者へのM&Aを進めている。 2012年1月には、ビケンテクノが北九州地区で事業を展開する小倉興産(福岡)を子会社化し、2013年12月には日本ハウズイングが札幌および東京で事業を展開する山京ビルマネジメントならびに山京商事の株式を取得、同年6月には日本管財が関西地区を基盤とするエヌ・ジェイ・ケイ・ホールディングスを子会社化している。

一方、国内市場の縮小を見越し、M&Aにより海外市場の開拓を進める事業者も目立つ。2012年9月、イオンディライトは、中国に子会社を置き、企業から間接業務のアウトソースを受けるBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業を展開するジェネラル・サービシーズ(東京)を子会社化。この提携を活かし、同社は中国大連でBPOをメニューに加えた総合FMS事業を加速させる。一方、日本管財は、2013年3月にオーストラリアの区分所有住宅等管理会社Prudential Investment Company of Australia Pty Ltd(PICA社)の株式を取得。オーストラリア全体で8%のシェアを誇るPICA社の基盤を活かして同国でのサービス拡大を目指す。日本ハウズイングは、2013年5月に連結子会社を通じて台湾の集順生活科技股份有限公司との間に合弁会社を設立、台湾でマンション管理事業の強化を進める。

業界におけるM&Aは、ストック拡大を目指す国内のM&Aと、総合FMSを目指して周辺事業を取り込むためのM&A、そして海外展開を推進するためのM&Aという3つのパターンに分けられる。

上場ビルメンテナンス企業のEV/EBITDA倍率の平均は約8倍となっている(n=12)。新規建設需要が頭打ち傾向にあるため、上場に対する評価は高いとは言えない。それゆえに、業界内の競争は厳しく、M&Aによりストックを拡大しスケールメリットを出したい企業が多く、M&A市場では、のれん付きでの売買(純資産を上回る価額での売買)が目立っている。

こうした市場環境下で、未上場のビルメンテナンス会社の経営者が創業利潤を得るには、株式公開(IPO) よりもM&Aでの売却のほうが圧倒的に有利といえる。

EV/EBITDA

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