業界ニュース

業界ニュース 2017年

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会事務局

インスペクター制度の新たな出発

2017/04 発行

2016年度以前の旧資格制度

 清掃の品質は、清掃作業そのものの結果の善し悪しを表す「作業品質」と、業務の管理体制や経営管理体制を表す「組織品質」とで構成されています。「作業品質」と「組織品質」は清掃品質の両輪であり、どちらか一方を評価するだけでは、根本的な改善を行なうことはできません。常に両方を総合的に評価・改善する必要があります。

 資格制度発足当初は、清掃作業の結果として現れる「作業品質」を評価する「インスペクター2級」の養成からスタートし、①作業品質講習受講・合格でインスペクター2級資格取得、②実績報告を3年間積み重ね、③組織品質講習受講・合格でインスペクター1級資格取得という、ステップアップしていく資格制度を描いていました。

 その後、インスペクター1級の立ち上げに向けて検討を進めるうちに、「社内組織によっては、作業品質と組織品質を別の担当者が評価・改善することもあり得るのではないか」等の意見が出され、これを反映する形で、先に誕生していたインスペクター2級を「インスペクター2級P(作業品質)」と名称変更し、新たに「インスペクター2級M(組織品質)」を誕生させることになりました。そして、この両方の資格を持つ者を、清掃管理業務を総合的に評価できる者として、インスペクター1級としました。

 当時は、この3種類の資格自体は期限を設けない永久ライセンスとする一方で、資格者の登録制度(5年ごとの更新が必要)を設けることにしました。登録自体は資格者の任意になりますが、これは単なる資格取得で終わらずに、資格者には常に現役のインスペクターとして現場で活躍して欲しいというねらいがありました。

制度変更のねらい

 しかしながら、前述のように「複数の資格」「資格と登録」といった、さまざまなステージが用意されたことにより、資格者自身が「インスペクター資格を活用したキャリアアップの展開方法がわからない」「長期にわたる、いくつもの審査により、かなりの労力と費用がかかる」などの声が寄せられ、ビルメンテナンス側に温度差が生じるようになりました。毎年、全国からインスペクターへの挑戦者が集まるものの、チャレンジする企業に偏りが見られ始めたのも事実です。

 一方、インスペクターのユーザーへの浸透状況を見た場合、公共施設では少しずつですが活用が見られ、入札要件に採用される事例も出はじめていましたが、しかしインスペクター資格者を保有する企業そのものの数が少ないため、競争条件として検討されたものの、最終的に見送りになる状況もありました。また、資格者はいても登録者数が伸び悩んでいたことを見れば、「インスペクターが社会で有効に機能している」といった楽観的な予測は許されない状況でした。

 そもそもインスペクター制度の考え方は、「インスペクターがユーザーへ品質点検結果を適切に報告し、改善を図ること、これがユーザーに価値として認められるようになったとき、インスペクターに新たな展開と多様性が生まれる」という、業界視点のボトムアップを主目的とした制度でした。これらを総合的に組み立て直し、「ビルメンテナンス側は資格に挑戦しやすく、ビルユーザー側には資格(資格者、企業)を使いやすい」制度にシフトすることとし、2013年度より再度、制度の大幅な見直し検討に入りました。

新制度のポイント

 前述のとおり、①本制度を使っていただくビルユーザーに分かりやすい制度にすること、②ビルメンテナンス従事者が本資格に挑戦しやすくすること、が変更の主な趣旨ですが、そこで忘れてはいけないのが、③品質管理状況の報告及び改善提案の内容を加え、より実践的な高い技能・知識を身につけていただくこと、です。この3つを基本コンセプトとして、2016年度より新たな制度としてスタートしました。大きな変更点は、2級P、2級M、1級と3種類あったインスペクターの資格を、1つに統合したことです。新制度によるインスペクターは、作業品質と組織品質両方の知識と評価の技術を学んでいただき、これまでの1級と同等の知識・技術を担保しています。

○ビルメンテナンスには挑戦しやすい制度に

 ビルメンテナンス(企業、従事者)に対しては、本資格に挑戦しやすいようになりました。旧制度においては、1級の資格を取得するには、2種類の講習を各2日間受講し、さらにそれぞれ2年間の実績報告書を提出しなければならなかったため、同じ年度内に2種類の講習を受講した場合でも3年もの歳月を要しました。

 このように時間と費用がかかっていたものを、新制度においては、申請から約8カ月で資格を取得できるようにしました。また費用も、2種類の資格取得が必要だったものを、資格を統合化して講習・課題の内容を見直したことで削減することができました。

 これまでに比べて、資格取得までの期間が短く、費用が安くなったことで、物理的な面で挑戦しやすい制度に変わりました。企業内で清掃管理業務の品質評価を行っている方、企業内に品質評価体制を構築しようとしている方、品質評価で顧客満足を高めようとしている方には、ぜひ資格取得をお勧めします。

 多くの方に資格者を取得したいだくことが、後述する「ユーザーが使いやすい制度」への大きな力となります。

 ○ビルユーザーには分かりやすい、使いやすい制度に

 ユーザーに対しては、制度を一本化したことで、これまで「2級P、2級M、1級のどれを活用したらいいのか分からない」という悩みを解決することができました。

 また前述したとおり、挑戦しやすくなった制度のもとでインスペクターがどんどん増えていけば、「インスペクターを活用したいが、保有企業が近くで見つからない」というユーザーの悩みを解決することができます。

 このように、従来は「資格者が取りにくい・増えない→ユーザーに使われにくい→資格に魅力がない→資格者が増えない→ユーザーに使われにくい……」という下向きのスパイラルに陥っていたものを、新制度に変更することで、『資格者がたくさんいる→ユーザーが選べる・活用される→資格に魅力が出る→資格者が増える……』という上向きのスパイラルにすることを目指しています。

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