M&Aの業界動向 アパレル業界

2017年 業界動向

業界定義
衣料品の生産、流通、販売に携わる業態を指す。さまざまなアパレル商品を扱う総合アパレルから、婦人服、紳士服、子ども服などを専門的に扱う専業アパレルまで多岐に渡る。
業界シェア
国内上場企業の業界トップは、カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングで売上高は、1兆7,864億円。2位はしまむらで5,665億円、3位はAOKIホールディングスで2,527億円となっている(2016年度)。
市場規模
9.2兆円

(矢野経済研究所「アパレル産業白書2017」)

成長率
1.5%減

(矢野経済研究所「アパレル産業白書2017」)

関連法規
家庭用品品質表示法、PL法、不正競争防止法

アパレル業界は深刻な不振が続いている。ファストファッションとハイブランド以外の国内アパレルブランドは、ほぼ壊滅状態となっている。大手のワールド、オンワードホールディングス、TSIホールディングスなども軒並み苦戦が続き、1990年代に15兆円を超えていた国内市場は、10兆円を割り込んだ。

こうした市場の失速を象徴するように、これまで見られた大手アパレルブランドが小規模な同業者を飲み込むようなM&Aはほとんど見られず、近年は業界構造を変革するためにM&Aを活用するケースが増えている。

それを象徴するのが、ライザップによるジーンズメイトや堀田丸正、マタニティ服のエンジェリーベなどの買収だ。ライザップは、ダイエット食品やフィットネスなどの事業で知られているが、その根幹にあるのは「自己投資産業No.1」を目指すという理念だ。つまり、ライザップはアパレルも自己投資産業と位置づけ、これまでのファッションブランドとは異なる戦略で事業展開しようとしているのである。もうひとつの異業種からの参入組として注目されているのが、家具販売のニトリホールディングスだ。同社は家具分野で実績を積んだSPAのノウハウを活かしたアパレル参入を目指しており、その実現に向けて今後M&Aを活用することが予想されている。

販売チャネルにおける構造変革の主体は、EC企業やネットマーケティング企業に移りつつある。女性向け月額ファッションレンタルサービスのエアークロゼットが、リアル店舗を展開するリシェの事業を譲り受けたケースは、その典型例といえるかもしれない。アパレルの主戦場は、もはや店舗ではなくネットに移っており、今後もその傾向が続くことは間違いない。ECが伸びる中で重要になるのが、顧客の趣味趣向や購買動向を捉え、体験価値を高めるデジタルマーケティングやAI、ビッグデータ、AR/VRなどのテクノロジーだ。今後はオムニチャネル化が進み、店舗は商品を確認したり、ブランドストーリーを体験する場となり、実際の購入はネットが主流になるといわれている。今後は、リアルでの体験価値を高めるため、アパレル店内にカフェが併設されるなどの展開も増えるかもしれない。そのストーリーに沿えば、今後、アパレルが外食企業にM&Aを仕掛けるケースもあり得るだろう。

もうひとつは、生産プロセスにおける構造変革だ。アパレル業界は、川上から川下までの商流が長い旧態依然とした体質が今も幅を利かせている。この構造は、一事業者がどれだけ改革を進めても変わらない。ここにメスを入れるには、業界構造全体を変革する大胆な取り組みが必要だ。たとえば、業界共通のクラウドプラットフォームを構築して、物理的な距離を超えて川上と川下を直結し、生産効率を高めコストを大幅にダウンする方法などが考えられる。アパレル大手のワールドは、システムコンサルティングのフューチャーと合弁会社を設立したり、日本政策投資銀行と共同運営のファンドを組成したり、これまでにない方法を駆使してファッション業界の抜本的な構造改革に取り組もうとしている。こうした取り組みが、どこまで業界体質を変えられるのか、今、業界では大きな注目が集まっている。

国内アパレル総小売市場規模推移(品目別)
国内アパレル総小売市場規模推移(品目別)
出典:矢野経済研究所

アパレル業界には勢いがないが、アパレルの持つ価値を再定義し、現代のライフスタイルに合う形に変換し、自社のビジネス強化につなげようと考える異業種の新規参入が増えてきた。

美容・健康関連事業で業績を急成長させているRIZAPグループ(東京)は、2017年2月に全国94店舗でカジュアルウェア等の販売を行う株式会社ジーンズメイト(同)の株式を公開買付けにより取得、ブランドの再構築、商品企画・開発力の強化、販売チャネル・営業力の強化、業務プロセス及びシステムの再編・強化を図っている。RIZAPグループは5月にも繊維製品や和装・洋装の卸売販売を手掛ける堀田丸正(同)を子会社化している。アパレル卸売業と素材メーカーの両面を持つ堀田丸正の特性を活かし、ニーズへの迅速な対応、PB商品の開発力強化、共同調達によるコスト競争力向上、中国・アジア圏を中心とした海外展開の強化を推進すると見られている。

オールアバウトの子会社でサンプリングサイト「サンプル百貨店」を運営するオールアバウトライフマーケティング(東京)は、2017年5月、ラグジュアリーブランドやトレンドのファッションアイテムなど女性向け商品を展開するECサイト「MUSE&Co.」を運営するミューズコー(同)を買収した。オールアバウトは、このM&Aを機にファッション分野のEC事業へ本格参入するとしている。

家電量販店・免税店大手のラオックスは、2017年9月に婦人靴のオリジナルブランドや有名ブランドのライセンスを取得しているオギツ(東京)および恒和総業(同)の株式を取得し、オギツグループを子会社化した。ラオックスは、2015年にも同業種のモード・エ・ジャコモ(同)、2016年にも同業種のシンエイ(同)、婦人靴製造業の振興製靴工業(同)の事業を取得している。ラオックスは、メイドインジャパンの高品質で安全性の高い衣料品、シューズ、服飾雑貨が訪日外国人の人気を集めていることに目を付け、アパレルを新たな事業の柱にすることを考えている。

IT企業によるアパレルのM&Aとしては、GMOインターネットグループのGMOペパボ(東京)が、2015年5月に、ハンドメイド関連Webサービスを提供するOCアイランド(同)を買収したケースが挙げられる。OCアイランドは、国内第3位のハンドメイド作品売買Webマーケット「tetote」や、手作り情報コミュニティ「レシパ」などを展開している。GMOペパボは2012年よりCtoCハンドメイドマーケット「minne」を展開しているため、同事業を強化する目的の買収と考えられる。

楽天(東京)は、2015年7月、バーチャル試着サービスを提供するFits.me Holdings Limited(英国)を完全子会社化した。Fits.me社は、アパレルを中心とする小売業者を対象に、実店舗で試着と同様の体験を得られる「バーチャル・フィッティングルーム(試着室)」を提供している事業者だ。このサービスを使うことでユーザーは、試着した際のイメージ画像を見たり、さまざまなサイズの商品を着せ替えたり、購入前にどの服が自分に合うのかを確認できる。楽天は、このサービスを活用して、自社モールにおけるアパレルのオンライン販売拡大を目指している。

一方、アパレル大手のワールド(東京)は、業界全体の改革に向けて動きはじめた。2017年9月にフューチャー(同)の子会社フューチャーインベストメント(同)との合弁で、プラットフォームの提供、システム関連のコンサルティング、財務・経営指導などのサービスを提供する新会社ファステック・アンド・ソリューションズ(ファステック)を設立した。同社は、両社の知見を融合させ、アパレル企業の付加価値を高め、業界構造を変革することを目指している。さらに、ワールドは2017年6月に日本政策投資銀行(DBJ)と連携し、ファッション産業を投資対象とした共同運営ファンド「W&Dデザイン投資事業有限責任組合」(通称「W&Dデザインファンド」)を立ち上げた。両社は、事業会社と金融機関それぞれの得意分野を活かして国内ファッション産業を活性化し、さらなる競争力強化への貢献を目指すとしている。

国内市場の縮小や新興国マーケットの拡大に伴い、アパレル業界はSPA型への転換など、ビジネスモデルの変革が進んでいる。また、気候や流行、景気に商品の売れ行きが左右されやすい業界なので、M&Aを検討する際には、資金計画が的確に行われているか、在庫管理が適切か、売れない商品の見切り販売をタイミングよく行えているかなどにも留意する必要がある。自社店舗を展開している企業であれば、店舗の差別化が図れているか、店員の商品知識や接客態度は適切かなど、財務諸表に載らない情報も十分チェックしておきたい。

EV/EBITDA倍率は平均6.7倍だが、分布は2~4倍が14.3%、8~10倍が16.7%と二つの山がある形となっている。

EV/EBITDA(アパレル業;n=43)

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