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M&Aインタビュー

M&AインタビューNo.23

株式会社石田工業所 相談役
石田 享也氏

株式会社石田工業所 相談役 石田 享也氏

1955年に創業し、福島県郡山市を中心に空調設備や給排水衛生設備等の工事を行う(株)石田工業所。相談役の石田享也氏は、創業者であるお父様より30歳代前半で経営を引き継いだ後、自らの足と努力で自治体の公共事業工事等を数多く請け負い、業績を拡大してきた。若くして経営を引き継いでから、今回、M&Aで事業承継されるまでの経緯や心境についてお話を伺った。

公共事業の受注で信頼と実績を重ね、経営は順調に推移
世代交代のため外部への事業承継を検討

社長になられてからこれまでの事業発展の経緯を教えていただけますか。

弊社は私の父が1955年に郡山市で創業し、空調衛生工事業を中心に地域に密着して事業を展開してきました。その後、私の母やいとこが経営を継いだ後、弊社に入社していた私が1991年に4代目の経営者となりました。私が社長になって27年、考えてみれば父より長く経営をしていたことになります。
私は新卒で父の会社に入社して、まずは少しでも会社の戦力になろうと頑張りました。技術系の会社なのに、私は理系ではなく文系の大学出身で……。同業大手に就職して経験を積む“武者修行”のようなことを全くしていなかったことなども負い目に感じていたところがあり、いろいろ資格を取ったりしていました。
勉強だけでなく、若いときは営業活動も頑張っていましたね。当時は指名競争入札で、まずは役所から選ばれなければ入札に参加できませんでした。ただ待っていてもチャンスは巡ってきませんから、福島県内の市町村の役所をほとんど全部、毎週のように回って、自作した工事経歴書やパンフレットなどを持っていきました。私が外回りをするようになってから入札の仕事が入り始めて、その後は県内57市町村のうちの5~7割くらいの仕事を弊社が請け負うようになりました。私はもともと負けず嫌いな性格なので、弊社より新しいような会社が入札に入っているのに、弊社は入っていないというようなときは本当に悔しくて……。「次はぜひともうちの会社を!」と思って、足繁く通いました。そうやって努力して仕事をとっているうちに、同業他社からも注目されるようになり、公共事業の受注に関しても徐々に信頼と実績を重ねていきました。

社長に就任されたのが91年ですから、その後、リーマンショックなどがあったと思いますが……。

そうですね。私が経営を引き継いだのがちょうどバブルが弾けた後で、まだバブルの余韻はあったものの、好況というわけではありませんでした。その後も不況やリーマンショック、さらに東日本大震災など、いろいろな社会的な浮き沈みがありましたね。ただ、振り返ってみると経営は意外と順調でした。大きな“貸し倒れ”も工事中の事故・労災もありませんでしたし、運が強いほうだったのではないでしょうか。県内の同業他社がどんどん倒産していくような時期もありましたが、そんな中でも会社を潰さずに残せて、かつ今回のM&Aで信頼できる会社にバトンを渡せたのは、幸運だったと言えると思います。

「わからないことだらけの中で、鈴木さんの存在にはとても助けられました」と話す石田相談役。
(写真右はストライクの担当の鈴木)

会社・事業の譲渡を検討することにしたきっかけは?

譲渡を真剣に考えたきっかけは、自分の年齢と後継者不在の2つです。
年齢については、気がついたら周りが皆、リタイアする年になっていたというのが大きかったですね。年上ばかりだった取引先の担当者が、いつの間にか自分より若くなっていき、私の同級生たちも50歳代後半で関連会社や取引先に出向したりして。「あれ、自分もそういう年なのか」と思い知らされて、世代交代を意識するようになりました。
後継者という面では、私の息子のことが大きなきっかけとなりました。息子が同業大手に就職したので、仕事を覚えて帰ってきて、いずれは会社を継いでくれたら……という期待がありました。しかし、息子は途中で別の夢を見つけ、その道を選択する決断をしました。何年か待ちましたが、息子の意志は揺るがず、外部への承継を考えるに至りました。
M&Aについて知りたいと思い、最初にM&Aの講習会に参加したのが50歳代半ば、確か東日本大震災の年だったと思います。それで「今後~3年くらいかけてM&Aについて考えていこうか」と考え始めた矢先に、震災が発生した。震災後は復旧工事などが次から次へと舞い込んで、休む暇もなくなってしまい、結局、本格的にM&Aの検討を進めたのは復旧工事が一段落してからになりました。

迷いはあったが、「ハッピーエンドになるなら」とM&Aを決断
「ここで肩の荷を下ろしたら」という家族の言葉も後押しに

会社を譲渡することに迷いはありませんでしたか?

迷いはずっとありましたね。相談相手があまりいない中で、決定打になったのは一番の話し相手だった家内の一言でした。「これまで必死で会社を守り続けてきたんだから、ここで一旦、肩の荷を下ろすのもいいんじゃない?」と言ってくれたのです。外部への譲渡という形で会社が残ってハッピーエンドになるのであれば、トライするだけのことはある、と。チャンスの神様には後ろ髪がないのだから、来たときにつかまなければならない、とも言ってくれました。確かにその通りだと思いましたね。

創業者のお父様にはどのタイミングで相談を?

父に相談はせず、買い手が決まったあたりで報告をしました。父は何も言いませんでしたね。私の経営に対して批判がましいことはほとんど言われたことがなく、「好きなようにしろ」とずっと言われていたので、今回のM&Aについても私の判断を尊重してくれたのかなと思います。

譲渡を検討する中で、特に優先順位の高い条件は何だったのでしょうか?

ストライクの鈴木さんに希望したのは、従業員や取引先の方が社名を聞いて、すぐピンと思い浮かんでくれるような、安心感のある会社であることでした。それから、企業文化と言うと大げさかもしれませんが、スーツよりも作業着を着て、現場主義で……というように、弊社と特徴やイメージが似ている会社だと、社員もやりやすいのではないかと思い、その部分も尊重しました。

M&Aの過程で悩んだこと、不安に思われたことはありましたか?

不安はずっとありましたよ。今は消えていますが、正直、譲渡した後もしばらく不安は残っていました。今はこれでよかったと思っていますが、本当にこれがベストの選択だったのかどうかはまだわからない。M&Aが成功したかどうかは、もっと時間が経たないとわからないだろうと思っています。
不安や悩みがある中で、M&Aの相談相手としてストライクの担当の鈴木さんがいてくれたことは心強かったです。M&Aは初めての経験ですから、やっぱり“わからないことだらけ”で、そのわからないことについて一つひとつ、鈴木さんがすぐに的確に答えてくれた。疑問に思ったことを直接電話して聞いたりしましたね。正直、もう面倒くさいと思ったりしたときもありましたが、そんなときもいろいろアドバイスしてくれました。鈴木さんは同じ福島の人間だということで話しやすかったのもありますし、土地勘も共有できました。

M&Aは自分の人生と社員の生活を守るための選択肢の一つ
自社を振り返り、掘り下げて見直すチャンスにもなる

成約後の従業員の方への発表や周囲の反応などを教えてください。

従業員の耳に他人の口を介して情報が入るのは避けたかったので、調印式の1ヵ月前に、口止めをしたうえで従業員には伝えました。そして調印式が終わり、会社に戻ってすぐに「正式に調印してきた」と従業員に改めて報告しました。それがスムーズにいき、特に混乱などはなかったです。
その後、新体制でのスタートの日の朝、朝礼で一人の従業員が「社長、長い間お疲れ様でした。これまでいろいろあったと思いますが、ここまで導いていただき、ありがとうございました」というようなことを言ってくれました。それは、やはりうれしかったですね。

M&A後は相談役になられたそうですが、 どのような形で勤務されているのですか?

相談役になってからも、毎日、出勤しています。でも、業界団体の役職などもすべて下りましたので、現役時代と比べると、ずいぶん時間の融通が利くようになりましたね。
時間ができたので、思い切って肩の手術を受けました。ずっと痛くて悩んでいたのですが、経営者が数週間も手術で離脱するのはなかなか難しく……。M&Aをして社長を辞したので、手術できたのかなと思います。知り合いにM&Aをしたと言うと、「まだそんな年齢じゃない」とか「暇なのは苦痛だよ」とか言われますが、そんなふうには感じていません。今年の3月末には、家内とイタリア旅行にも行ってきました。ちょっと休みすぎかなという気がしないでもないですが(笑)、ずっと忙しかったので、時間の余裕ができたのはありがたいです。

M&Aをしたことは取引先等には浸透してきましたか?

今はまだ、一歩外に出ると「社長」と呼ばれることが多いですね。「石田工業所=石田享也」と思っている人がまだいるのだと思いますが、いつまでも私のネットワークで引っ張ってはいけないので、新しい石田工業所の人間に早く引き継いで、頑張ってもらわなくてはと思っています。

同じような立場の経営者の方へアドバイスをいただけますか。

M&Aは日本の経営者の持っている古い概念などとは違う、まったく新しい考え方なので、情報収集は大いにやったほうがいいと思います。M&Aを一つの選択肢として、自分の人生と社員の生活を守るということを考えるのであれば、積極的にいろいろなセミナーなどに参加されるのもよいでしょう。
なかには、M&Aは自分には関係ない、検討もしないという方もいらっしゃると思いますが、思い込みで判断するのは適切な判断と言えるでしょうか?結果的にM&Aにつながらなかったとしても、その過程でいろいろなことを勉強できます。自社を振り返り、掘り下げて見直す機会にもなります。自分自身の引き際も見えてくると思います。毎日忙しくしていると、自分の会社や人生を見つめ直す時間はなかなかありませんから、その意味でもM&Aを検討することは有意義なのではないかと思います。

本日はありがとうございました。

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