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M&A事例ライブラリ100

M&A市場SMART™〔情報ID: SS0274〕高周波加熱装置製造の株式譲渡が成約致しました。

2010年2月

後継者不在のため譲渡を決断

A社は関東地区で高周波を使った加熱装置の製造業を営んでいた。創業社長であり同社の営業・技術を切り盛りしていたA社長は5年ほど前から後継者問題に頭を悩ませていた。

A社長とストライクの付き合いは3年前から。ストライクとM&Aの専任契約を締結の後、M&A市場SMART?に掲載。同社のビジネスモデルや高収益に興味を持った会社の中から特に買収意欲の旺盛な3社と面談を行った。トップ面談、お互いの工場見学などを行い、A社の事業にほれ込んだB社を優先交渉先に選定した。

売買金額、従業員の処遇などを協議し、基本合意(仮契約)契約の締結、買収監査の実施など一般的なM&Aのステップに沿って話は進んでいった。しかし、最終契約の段取りをしている最中、A社長から耳を疑うようなコメントがあった。「今回のM&Aを中止したい」。

我々の経験から言うと、M&Aの直前に"マリッジブルー"になる経営者は少なくない。理由を聞いてみると「いろいろあって、今回のM&A を中止して、身内(他の仕事に就いている)に事業を譲りたいと思っている」との返事だった。親族内承継で行う場合、2代目は創業者以上にカリスマが求められること、親族とはいえ業務経験のない者に経営させることの難しさや危うさ、日本経済を取り巻く環境の厳しさなどをお伝えしたが、我々は仲介アドバイザーであり、最終的には意思決定者であるA社長の意思を尊重する立場である。トントン拍子に進んでいたが、中止せざるを得なかった。

それから1年が経過した。A社長から私の携帯に着信があり「近くにいるから飲みに行かないか」と久々の連絡だった。再会の後、お互いの近況報告を済ませ、おもむろにA社長が切り出した。「1年前にストライクさんが言ってくれたことが今になって分かってきた。やはり身内だからといって経営者ができるほど、今の世の中は甘くない。」「まだチャンスがあるならば、自社の事業承継問題の解決に力を貸してくれないか」とのことだった。 

私は再度依頼を受けた事に恩を感じつつも、「我々の力不足もありますが、前回のM&Aを中止して、候補先B社に迷惑をかけたのは事実です。私達は貴社も大切なクライアントですが、買い手となる会社も大切なクライアントです。」とあえてA社長に苦言を呈した。「今回の話を再開するにあたって、A社長が後継者に指名した身内の方に会わせて頂けないでしょうか。ご家族のみなさんがM&Aに同意しているのを確認できれば、お話を再開したいと思います。」

こうして1週間後、私は再び、A社長にお会いした。隣にはA社長が指名した後継者(身内)の方が座っていた。結論としては「自分ではA社長のような経営者になれない」「M&Aを進めて頂いて構わない(身内一同、A社長の意思を尊重する)」「M&Aが進んだ場合、私は他の仕事に就いて生計を立てる」と身内からの賛成意見を聞くことが出来た。ここまでA社長の人生に関与した以上、責任は重大だ。A社を取り巻く経済環境、財務内容、営業状況に関わらず、我々はM&Aの候補先を是が非でも探して、A社長の事業承継問題を解決しなければならないと思いを新たにした。 

リーマンショック以降、業種によっては「売上が前年比8割減少した」という企業もあり、候補先の発掘は難航したが、その中で、中部エリアの製造業C社がA社の事業に興味を持った。C社長は「このような景況感はむしろチャンスと捉えています。人と同じことをしていても、これからは生き延びていくことはできません。ぜひ、ご縁があるならば今回の話は前向きに進めたい」と力強く語ってくれた。

交渉の過程では、金額面はもちろん、M&A後のA社長の処遇(役職、勤務時間/給与、役員退職慰労金など)、A社の従業員への発表の仕方(キーパーソンは事前に報告するかor全社員一緒に発表するか)、C社からA社に経営者として誰を派遣するか(結果としてC社長の右腕を単身赴任で派遣する形で決着した)など、大企業のM&Aで行われる交渉とは一味違った内容を詰めていった。

最終契約は2月某日に行った。最終契約には売買代金の決済を円滑に行うために金融機関の担当者も同席した。関係したみなさんがA社長の慰労をねぎらいつつ、今後のB社の発展を祝う形で行われた。

後日談

本件は初期面談から約4ヶ月で最終契約まで至った(これはスピード決着です)。本件を通じて譲渡企業の経営者の苦悩を目の当たりにして、「事業承継の難しさ」を改めて感じた。協議の過程でA社長が言った「やはり会社を譲渡するのは寂しいものだよ。」という言葉が印象的だった。

また、C社長は創業オーナーではなく、もともとC社の従業員であった。数年前に先代(他人)から指名され、社内昇格という形で社長に就任した。C社長は託される側で事業承継を経験していたから、A社長の"創業者としてのプライド"や"事業を手放す寂しさ"を理解できたのであろう。中小企業のM&A ではビジネス(交渉)の部分と譲渡企業オーナーに対する配慮のバランスが必要不可欠である。

参考
譲渡会社の概要
事業内容 高周波加熱装置製造業
所在地 関東
買収会社の概要
事業内容 製造業
所在地 中部

本件M&A事例についてのお問い合わせは担当: 金田・石塚 まで