M&Aの業界動向 ホテル・旅館業

2014年 業界動向

業界定義
宿泊料を受けて人を宿泊させる施設。
(旅館業法より)
市場規模
3兆6,800億円
(観光庁「観光統計」2012年確定値)
成長率
6.0%増
(観光庁「宿泊旅行統計調査」2013年1月~12月)
業界シェア
帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニが「御三家」として知られるが、売上高は3つ合わせても、わずか4%程度に過ぎない。旅館、ビジネスホテル、エコノミーホテルなど、規模も業態もさまざまな宿泊施設がしのぎを削る。

3.6兆円

6.0%増

主な上場企業 (時価総額順:2014/10/3現在)

コード 企業名 時価総額
9708 帝国ホテル 1,414億円
9722 藤田観光 451億円
9713 ロイヤルホテル 210億円
関連法規
旅館業法、国際観光ホテル整備法

2013年1年間の延べ宿泊者数は、全体で4億6,589万人泊、そのうち日本人が4億3,239万人泊(シェア92.8%)、外国人が3,350万人泊(同7.2%)だった。前年比で延べ宿泊者数は6.0%、外国人延べ宿泊者数は27.3%も増加した(※1)。また、客室稼働率を宿泊施設タイプ別でみると、シティホテル76.2%、ビジネスホテル70.7%、リゾートホテル50.0%となっており、この数字は観光庁の調査開始以来、最も高い客室稼働率となっている(※2)。好況の背景としては、LCCの新規就航に加え、円安効果と東南アジア向け観光ビザ発給の緩和による外国人観光客の増加が大きい。また、開業30周年を迎えた東京ディズニーリゾートや世界遺産に登録された富士山、伊勢神宮の式年遷宮等を目的とした旅行需要も宿泊市場を下支えする要因となった。

2014年後半以降も、為替水準が円安基調で推移すると見込まれることから堅調な需要が見込まれる。なお、訪日外国人の国籍(出身地)別延べ宿泊者数をみると、フィリピン(前年同期比+101.4%)、中国(同+83.6%)、マレーシア(同+61.4%)、タイ(同45.3%)が大幅に拡大しており、この傾向は今後も続くと予想される(※2)。ただし、訪日外国人の宿泊先は、1位の東京都、2位の大阪府、3位の北海道が全体の1/2以上を占めており、三都府県以外のホテル旅館にとって訪日外国人の誘致は喫緊の課題となっている。

業界における最大需要が予想されるのは、2020年の東京五輪である。これに伴う観光客の需要増を見越して「東京マリオットホテル」「ザ・リッツ・カールトン京都」「コートヤード・バイ・マリオット東京ステーション」など外資系ホテルが続々開業しており、今後も「アンダーズ東京」「アマン東京」が開業を予定している。一方、国内事業者も2016年に「星のや東京」「プリンスホテル赤坂」が開業し、2017年にはロイヤルホテルが新ブランドホテルを大阪に開業、2019年には「ホテルオークラ東京」の新本館がオープンするなど、東京五輪に向けた準備が着々と進められている。

政府が国策として「観光立国」を掲げており、今後は国際会議などの法人旅行需要(MICE)の増大も予想されており、大都市圏の需要はさらに伸びるであろう。


年別延べ宿泊者数、うち外国人延べ宿泊者数の推移(2007年~2013年)
出典:「宿泊旅行統計調査報告」観光庁


都道府県別客室稼働率(2013年1月~12月)
出典:「宿泊旅行統計調査報告」観光庁

(※1)出典:「宿泊旅行統計調査報告」観光庁

(※2)出典:「観光統計」観光庁2014年9月24日発表プレスリリース

2013年1月から2014年上半期のホテル旅館業界におけるM&Aを分析した結果、おおよそ3つの特徴が浮かび上がった。

1つ目は、2020年東京五輪開催を見据え、訪日外国人の取り込みを目指すブランドホテル絡みのM&Aだ。2013年11月にインドネシア最大級のホテル・レジャー事業者ミッド・プラザホールディングスが、傘下のPT.Karang Mas Indnesia(KMI)を通じて、「ホテルニューオータニ熊本」を運営する熊本駅前ビルに資本参加。さらに2014年3月には、香港のKeytop Corporation Limited が日本法人GCP Hospitality Japan(東京)を通じて、エイチ・アール・オーサカから「ハイアットリージェンシー大阪」を譲り受けた。これらはOUT-INの事例だが、IN-INの動向も活発だ。2013年2月には、オリエンタルランド(OLC)が子会社を通じてブライトンコーポレーション(BC)を買収。BCは「浦安ブライトンホテル」「京都ブライトンホテル」のほか、京都大阪にもビジネスホテルを展開しており、OLCはディズニーリゾートとのシナジーを活かした事業に取り組むと予想される。また、オリックス不動産は、2013年2月にモルガンスタンレー系のファンドから「ハイアットリージェンシー京都」を譲り受け、さらに2014年4月にもニューオータニリゾートから「宇奈月ニューオータニホテル」の所有・運営事業を会社分割で買収している。こうしたブランドホテルを巡るM&Aは、今後も大都市圏を中心に活性化することが見込まれる。

2つ目の傾向は、リゾート地のM&Aだ。中でも、訪日外国人に人気が高い北海道内のM&Aが目立つ。2013年5月に知床グランドホテルが、「知床プリンスホテル風なみ季」を運営する知床プリンスホテルから会社分割により事業を譲り受けた。同じく北海道の観光大手鶴雅グループの「阿寒グランドホテル」は、飯田(京都)から「ニセコ昆布温泉ホテルあしりニセコ」を譲り受けた。また、ホスピタリティオペレーションズ(東京)は、2013年9月に米国ローンスターの投資先ソラーレホテルアンドリゾーツから「シェラトン札幌」を買収し、金谷ホテル観光(日光市)はティーアールエス(千歳市)から「支笏湖いとう温泉」の経営を譲り受けている。他県の例としては、長野県松本市郊外で高級旅館を運営する明神館がプライズワード(名古屋)から「ホテルアルモニービアン」(松本市)を譲り受け「松本丸ノ内ホテル」とリブランド化して開業した案件などがある。ほかにも、経営不振となった温泉宿をM&Aで取り込み、事業拡大を続ける大江戸温泉物語を運営するキョウデングループ(長野県)の動きも目立っている。

3つ目は、経営不振に陥った地方のビジネスホテルを買収して、事業の拡大を進めるホテルチェーンの動向だ。近年、活発な動きを見せているのが、静岡県西部を中心にホテルチェーンを展開する呉竹荘(浜松市)である。2013年6月に「ミユキステーションホテル豊橋」、同年9月に「掛川ステーションホテル」(掛川市)、さらに2014年5月にも「金沢国際ホテル」(金沢市)を買収。これにより、呉竹荘は全国26か所のホテルを運営するチェーンとなった。ほかにも、神戸市のホテルマネジメントインターナショナルが2013年5月に「湯本観光ホテル西京」(長門市)を、同年11月にも「グランドホテル浜松」の事業を譲り受けており、ビジネスホテルチェーンによる地方の小資本ホテルのM&Aが今後も活発化すると予想される。

営業利益は12社中9社が黒字であるが、減価償却費が大きいためEBITDAは12社全てが黒字となっている。

EBITDA倍率の平均は20倍となっている。これはホテル業は設備投資やランニングコストで多額の資金が必要であること、また、ホテル業の周辺事業も営んでいる会社が殆どであり、その投資のための多額の資金が必要であることが借入金が多い要因と考えられる。現に主要12社のうち9社が現預金よりも借入金が多い。なお、EBITDA倍率の分布としては、10倍未満の会社が3社、10倍以上20倍未満の会社が5社、20倍以上の会社が4社となっている。

営業利益が黒字の会社は概ね投資キャッシュ・フローが数億円以上のマイナスとなっており、利益を計上するためには大規模な設備投資が必要であることが分かる。一方、営業利益が大幅に赤字の会社は投資キャッシュ・フローもプラスとなっており、これは固定資産を売却したことによる収入が要因である。買収にあたっては、買収後も設備投資によるキャッシュ・アウトが毎期必要であることを考慮しないと資金がショートする可能性があるので注意が必要である。

Page Top