M&Aの業界動向 建設・土木業界

2011年 業界動向

業界定義
土木工事業、建築工事業、建築リフォーム工事業、大工工事業、電気工事業等
(総務省日本標準産業分類より)
市場規模
43兆2200億円
(国土交通省「平成23年度 建設投資見通し」)
成長率
5.1%増
(国土交通省「平成23年度 建設投資見通し」)
業界シェア
2008年度のゼネコンの完成工事高ランキング1位は清水建設、2位は鹿島、3位は大林組(日刊建設通信新聞社「建設人ハンドブック2010年版」)。全国約50万社ある建設会社のうち、約99%は資本金額が3億円未満の中小零細企業が占める。

43兆円

5.1%増

主な上場企業 (時価総額順:2015/4/10現在)

コード 企業名 時価総額
1925 大和ハウス工業 17,481億円
1928 積水ハウス 12,814億円
1801 大成建設 7,605億円
1803 清水建設 6,497億円
1812 鹿島建設 5,910億円
1802 大林組 5,678億円

建設業界は戦後から高度成長期にかけて、全国の道路やビル、ダムなどさまざまなインフラを整備してきた。しかし、近年は公共事業の激減を背景に、厳しい競争にさらされている。建設業界を支える建設投資は、土木工事に代表される公共工事と、住宅やビルなどの建築工事を中心とする民間投資に支えられている。

2011年度の国内建設投資総額は前年度比5.1%増の43兆2200億円となる見通しだ。東日本大震災の復旧のための2兆4100億円が公共工事費を押し上げた。帝国データバンクの景気動向調査によると、建設業の約47.7%が「復興支援を行っている、もしくは行う見込みである」と回答。総合建設会社(ゼネコン)大手4社の2011年4~6月期における建設受注高を見ると、鹿島を除く3社が前年同期比4割以上の大幅増を達成。2012年3月期の業績予測はいずれも上向きで、売上高は前年比2.0~13.1%増とされる。

バブル崩壊以降、建設業を取り巻く環境は大きく変化した。民間投資は1990年度をピークに、以降は減少に転じた。政府は、雇用確保などを目的に公共事業を積極的に展開したが、現在では公共事業費は大幅に削減され、ピーク時の約半分に。長引く不況の影響もあるが、インフラの整備が進み、公共工事の必要性が低下したためとも考えられる。

建設業界は典型的なピラミッド構造になっている。頂点に「スーパーゼネコン」と称される超大手総合建設会社5社(大成建設、鹿島建設、清水建設、大林組、竹中工務店)が君臨。その下に、全国規模で事業を展開する大手ゼネコンが約50社存在する。さらにその下には売上高10億円を超える地方ゼネコンが約2万2000社、そのほか施工実績のある業者が20万近くある。また、建設業界=ゼネコンと思われがちだが、住宅メーカーやリフォーム会社など建設業を構成する事業者は多岐に渡る。

公共工事費が削られ、国内建設需要が低迷するなか、海外展開に力を注ぐ企業が相次いでいる。社団法人海外建設協会によると、2010年度の海外建設受注数は1,674件、総額9,072億円にのぼる。

2009年には清水建設と西松建設がマレーシア政府から水道トンネルの掘削工事(総額約400億円)を受注。日本政府の支援プロジェクトとしてはアジア最大規模の水道インフラ工事にあたり、日本の水ビジネスの将来を占う事業としても注目を集める。鹿島建設は2007年にシンガポールの建設会社と合同で世界最大級のオフィスビル「マリーナベイ金融センター」を約438億円で受注。2010年7月にはシンガポールで総額760億円規模の高級ホテルなどを竣工した。

住宅メーカー各社も海外事業を積極的に展開する。積水ハウスは2010年9月以降、中国や米国、オーストラリアに相次いで進出。大和ハウス工業は2011年8月にベトナムにおける工業団地開発事業に参画した。同社は新興国を中心に、工業団地開発に積極的に取り組む方針だ。

国土交通省の統計によると、2009年の日本国内の住宅着工戸数は78万8410戸と、ピークだった1996年の半分以下に落ち込んでいる。2015年から人口が本格的な現象局面に入る日本では、頭打ちの内需をどういった形で克服するかが最大の課題と言える。異業種との連携を視野に入れた業界再編や、海外市場への積極的な進出は今後ますます加速すると予測される。

建設業界では、合併は公共工事の入札窓口を減らすとして、長年敬遠されてきた。しかし、近年ではさまざまな建設会社が経営基盤の強化や事業領域の拡大、人材の確保などを目的としたM&Aに乗り出している。

2009年11月には大成建設が中堅不動産会社である有楽土地を株式交換によって完全子会社化している。また、2011年7月には準大手ゼネコンの熊谷組が観光有料道路「白糸ハイランドウェイ」の全株式を取得し、道路運営に参入した。

円高基調を背景に、海外におけるM&Aも活況を呈している1964年から米国へ進出している鹿島建設は、米国本土で建築の設計および施工を担うカジマ・ビルディング・アンド・デザイン社(KBD)、産業施設の設計・施工に特化したオースチン社などに加え、2008年には米国南東部の建設会社、バトソン・クック社を買収。一方、米国の建築会社ウェブコ―、EWハウエル、JSクラークを傘下に持つ大林組は2011年3月にカナダの建設会社ケナイダイも買収した。

M&Aによって地元企業が持つ豊富な実績と経験、ノウハウを取り込む戦略は今後ますます活発化していくことだろう。

損益面では主な建設業20社すべてが直近決算で営業黒字。また、企業価値では、EV/EBITDA倍率(n=32。EV、EBITDAがマイナスの企業を除いて集計)は平均12.1倍。分布としては8~10倍台が多く、数値上は比較的高めに分布している。EBITDA倍率が高く分布している理由のひとつとして事業価値に比してEBITDAが過少な会社が多いことも原因のひとつとなっており、企業価値算定に当たっては注意が必要である。

また、株価純資産倍率(PBR)に目を向けると、1倍割れが87.5%となっており、ほとんどが純資産割れで取引されている。

建設業の場合は、製造業などと比べてキャッシュフローに基づく企業価値の評価が難しい側面もある。翌年度以降も受注がなくなることもあれば、施行中に発注者が破綻し、工事費が不良在庫化するリスクもはらんでいる。

建設業界でM&Aを進める場合、人材に対する価値評価も大きな課題となる。とりわけ、中小建設業の場合には、有能な人材の退職や転職によって事業そのものが危うくなるケースも珍しくない。こうした人的リスクも考慮した上で、企業価値評価の妥当性を慎重に吟味する必要があるだろう。

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